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工藤 桃子 & 町永 早紀 ピアノジョイントリサイタル 開催レポート
《 東京音楽大学 表参道 サロンコンサートVol.46 》
2019年7月4日(木) 18:00開場 18:30開演
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
《東京音楽大学 表参道 サロンコンサート》のVol.46は、同大学ピアノ演奏家コースの1年に在学中のフレッシュなお二人、工藤桃子さんと町永早紀さんのリサイタルです。すでに数々のコンクールで賞を受賞されていますが、今宵はそろって「人生で初めてのリサイタル」で、ピアニストとして歩み始める、記念すべき一夜となりました。前半は工藤桃子さん。ハイドンの「ピアノソナタ 第56番 ニ長調 Hob.??:42 Op.37-3」で、爽やかにスタートしました。可憐なソナタを細部まで丁寧に、心を込めて演奏。パッセージ一つひとつにストーリーが感じられて、とても素敵でした。
2曲目はJ.S.バッハの「半音階的幻想曲とフーガ BWV903 ニ短調」。今度は曲調が一転して、悲劇的な幻想曲に、深刻な雰囲気のフーガでしたが、堂々たる構築感で見事に弾き切りました。
続いて、ベートーヴェンの「ピアノソナタ 第27番 Op.90 ホ短調」。理性と情熱とが交錯する第1楽章は、若い感性にぴったりでした。第2楽章の素朴であたたかな旋律が、耳にスーッと、自然に馴染んでいきます。整然とした中にほのかな歌心を漂わせ、そのさじ加減が心地良かったです。
最後の曲はスクリャービンの「幻想曲 Op.28 ロ短調」。スクリャービン初期の作品の最後、ロマン派的な要素をふんだんに盛り込んだ作品です。これ以上のロマンティックはないと言ってもよいほど感動的な音楽を、ダイナミックに演奏して締め括りました。
休憩を挟んで、後半は町永早紀さん。最初の曲は、ベートーヴェンの「ピアノソナタ 第24番 Op.78 嬰ヘ長調『テレーゼ』」です。第1楽章の愛らしい旋律を、情感を込めて演奏。音楽が溢れ出てくるかのようでした。第2楽章では切れ味の良いリズム、音量の変化のコントラストが鮮やかでした。
続いて、ブラームスの「パガニーニの主題による変奏曲 第二集 Op.35 イ短調」。パガニーニの「カプリース」から引用した有名なテーマが提示され、多種多様な超絶技巧を駆使した変奏曲が次から次へと展開していきます。迫力に満ちた、力強い演奏でした。
そして最後はラヴェルの名作、「クープランの墓」です。流れるように走り抜けた〈プレリュード〉。端正な〈フーガ〉では一音一音が輝く雫のよう。神秘的な〈フォルラーヌ〉はまさに踊るよう。変化に富んだ音楽が、現れてはさりげなく通り過ぎていきます。ミステリアスな〈リゴドン〉。高貴な〈メヌエット〉は丁寧に紡がれ、同音連打の高度なテクニック〈トッカータ〉は典雅に――。クライマックスを華やかに彩りました。
アンコールは工藤桃子さんと町永早紀さん、二人による連弾で、フォーレの組曲「ドリー」より第6番〈スペイン風の踊り〉。明るく輝くような颯爽とした演奏に、会場からは大きな拍手が送られました。今宵の経験は、お二人の未来へとつながる大きな一歩となったことでしょう。今後の成長に注目です。
(H.A.)
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