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ニューアーティスト・ランチタイムコンサート2019 in 表参道
藤田 真央 ランチタイムコンサート 開催レポート
2019年6月10日(月) 11:30開場 12:00開演
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
ニューアーティスト・ランチタイムコンサート2019 in 表参道として藤田真央さんのコンサートが開かれました。藤田さんは、2016年の浜松国際ピアノアカデミーコンクール第1位、2017年には第27回クララ・ハスキル国際ピアノ・コンクール優勝の他に各特別賞を受賞するなど、既に国内外で受賞を重ねています。演奏活動も、2013年の初リサイタル以降、国内外でリサイタル、オーケストラとの共演なども数多く行っています。また海外の国際音楽祭にも何度も招待され、リサイタルを行って高い評価を得ています。現在は東京音楽大学ピアノ演奏家コース・エクセレンスに特別特待奨学生として在学し、研鑽中です。
このコンサートは急遽決定しましたが、それにも関わらずチケットは発売早々に完売したそうですから、彼の人気と実力が既によく知られているのでしょう。
プログラムは、スクリャービン、ショパン、プロコフィエフの3人のピアノソナタという重いものでした。
最初はスクリャービンの「ピアノソナタ 第2番 嬰ト短調 Op.19《幻想》」です。第1楽章では幻想的なもやもやした感じで始まり、やがてはっきりとしたクリアな音になり、再び静かな音を奏でますが、その音のきれいさに驚きました。第2楽章は速いテンポで、動きが細かく激しいのですが、その速い動きの中にも音に芯があり、決して鍵盤を叩くような雑な音は出しません。
2曲目はショパンの「ピアノソナタ 第3番 ロ短調 Op.58」。粒立ちの良いクリアな音で入りますが、ここでも実にきれいな音を出します。間の取り方が非常に上手く、フレーズの移り方も自然でとても良い感じです。第2楽章では指がよく回りテクニックの素晴らしさを見せますが、決してテクニック優先ではなく、音楽表現に必要なテクニックがしっかりとついているように感じます。第3楽章のゆっくりしたメロディーでも、音楽に思いが込められているように感じさせ、優しい気持ちにさせます。哀愁を帯びたメロディーを静かに演奏するところに惹き付けられます。楽章間をあまり空けずにフィナーレに入りましたが、聴衆を惹き付けたまま次の楽章の音楽に進むので、全体の流れを損ないません。冒頭の和音の連続でも決して叩かず、豊かな響きを出します。最後の盛り上がりへの持って行き方も実に素晴らしいものがありました。
最後はプロコフィエフの「ピアノソナタ 第7番 変ロ長調 Op.83」です。ショパンから雰囲気をガラッと変えるのがとても上手く、この曲の何とも言えない尖った感じを非常に上手く表現しました。この曲でも2楽章から3楽章へは間を置かずに入りました。音はクリアで、この曲では先鋭的に演奏する場面もなかなか上手く、激しいところでも決して叩かずに、豊かな響きで弾き切りました。実に潔い演奏と言えるでしょう。
アンコールにショパンの「12の練習曲 Op.25」から第11曲《木枯し》を演奏し、満員の聴衆からの万雷の拍手で幕を閉じました。
素晴らしいピアニストの登場で、今後が非常に楽しみです。
(K.Y.)
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