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ニュー・アーティスト ランチタイムコンサートシリーズ 2019
樋口 一朗 & 小林 海都 & 佐藤 元洋
ランチタイムコンサート 開催レポート
2019年
5月20日(月) 12:00〜14:10 (11:30開場)
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

 

 

 これから羽ばたこうとする若く優秀な演奏家を紹介するニューアーティスト・ランチタイムコンサート2019 in 表参道。この日の出演者は、樋口一朗さん、小林海都さんと佐藤元洋さんの3人です。

 最初の演奏者は樋口一朗さん。樋口さんは桐朋学園大学を卒業し、現在同大学院1年在学中です。国内の多くのオーケストラと共演したり、ソロ・リサイタルを行ったりなど、各地で演奏活動を行っています。

 1曲目はショパン「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ Op.22」です。この曲はピアノとオーケストラによる演奏もありますが、作曲者自身でアレンジしたピアノ・ソロ版が現在では人気が高く、演奏される機会も多いです。樋口さんはアンダンテの部分とポロネーズの部分との対比が鮮やかで、この曲の大きな特長である華やかさがよく出ていました。

 2曲目はスクリャービンの「ピアノ・ソナタ 第5番 Op.53」です。これ以後のピアノ・ソナタ同様単一楽章のこの曲は、まだ初期のロマン派的な香りを残した作品ですが、技巧的には非常に難しいものがあります。樋口さんは、ロマン的な部分や激しい部分などが交錯するこの作品の面白さを引き出しました。

 3曲目はグノー=リストの「歌劇《ファウスト》のワルツ」です。樋口さんの演奏は、後半に向かって原曲のワルツの華やかさをどんどん盛り上げて聴衆を惹き付けていきました。

 2人目は小林海都さん。小林さんはマリア・ジョアン・ピリス女史の下で研鑽を積みながら、女史が力を注いでいる若手音楽家育成プロジェクトの一員として幅広く活動しています。日本の主要オーケストラをはじめ、ヨーロッパでも多数のオーケストラとも共演しています。

 1曲目はハイドンの「ピアノ・ソナタ 第13番 ト長調 Hob.XVI-6」です。これはまだハイドンの初期の作品で、本来はディヴェルティメントです。明るく可愛らしい曲を、古典派の作品らしくきっちりと明るい音で演奏しました。

 2曲目はシューベルトの「4つの即興曲 D935 Op.142」より《第1番》です。しっとりとして気負いもなく、実に間の取り方のいい演奏を聴かせました。

 続いてスクリャービンの「24の前奏曲 Op.11」より第2曲です。この曲はスクリャービンのまだ初期の頃の作品ですが、後の片鱗を伺わせるような曲です。ごく短い曲ですがすっきりと演奏し、すぐに最後の曲、ストラヴィンスキー=アゴスティの「バレエ組曲《火の鳥》」より『II..凶悪な踊り』『VI.子守歌』『VII.フィナーレ』に入りました。

 『II..凶悪な踊り』では、激しさで凶悪さを表現していて、なかなか面白い演奏でした。『VI.子守歌』から『VII.フィナーレ』では、静かな場面から次第に盛り上がり、スケールの大きさをよく表現していて雄大さがあり、会場も盛り上がりました。

 3人目は佐藤元洋さん。佐藤さんは東京藝大附属音楽高校を経て東京藝大を卒業し、現在はベルリン芸術大学で研鑽を積んでいます。東京藝大卒業時にはアカンサス音楽賞、藝大クラヴィーア賞、同声会賞を受賞。各地でのソロ・リサイタルのほか、国内の著名オーケストラと多数共演しています。

 1曲目はスクリャービンの「ピアノ・ソナタ第9番 Op.68《黒ミサ》」です。この日の出演者が3人ともスクリャービンを取り上げているのが興味深いところです。この曲はスクリャービン後期の代表的な作品で、単一楽章のソナタです。難曲ですが、この曲の持つ不気味な感じをうまく引き出していました。

 2曲目はJ.S.バッハの「パルティータ 第1番 変ロ長調 BWV825」です。バッハのチェンバロの世界、6つの舞曲の世界を、細かな表現で実に端正に演奏しました。

 最後の曲は、フランクの「前奏曲、コラールとフーガ ロ短調 FWV21」です。佐藤さんは「前奏曲」の細かいアルペッジョを実に美しく奏で、切れ目なしに入った「コラール」では後半に次第に盛り上がってそのまま「フーガ」に入り、後半に現れた「コラール」のテーマに「フーガ」のテーマが加わってクライマックスを迎え、輝かしく終わって聴衆の喝采を浴びました。

 3名ともしっかりとしたテクニックを持ち、音楽的な個性も豊かで、これから大いに楽しみなピアニストと言えるでしょう。

(K.Y.)

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