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高井 玄樹 & 間世田 采伽 ランチタイムコンサート 開催レポート
東京藝術大学ランチタイムコンサート2019 in 表参道
<大学院音楽研究科修士課程1年生によるピアノジョイントリサイタル Vol.1>
2019年5月15日(水) 12:00〜13:30(11:30開場)
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
「東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程1年生によるピアノジョイントリサイタル」全8回の第1回目が行われました。今回の出演者は、高井玄樹さんと間世田采伽さんのお二人です。最初の高井さんは、埼玉県立芸術総合高校音楽科を経て、東京藝大を卒業。現在、大学院修士課程に在籍。第15回ウィーン国際ピアニスト・コンクール入選、大学内で「藝大クラヴィーア賞」を受賞しています。
高井さんはまず、この日に弾く2曲について説明をしました。それによると、最初のシュニトケの「前奏曲とフーガ」は、高井さんが現代音楽を好きになるきっかけになった曲だそうです。この曲では、出だしからの低音をよく利かせたシュニトケの音世界を紡ぎ出し、現代音楽でありながら聴衆を惹き付ける何かを感じさせました。
シュニトケが静かに終わり、ちょっと間を置いてすぐにJ.S.バッハ「平均律クラヴィーア曲集」に入りました。この曲集の第2巻から「第14番 嬰ヘ短調 BWV883」「第15番 ト長調 BWV884」「第20番 イ短調 BWV889」「第22番 変ロ短調 BWV891」の4曲と、第1巻から「第1番 ハ長調 BWV846」の1曲が弾かれました。
「前奏曲とフーガ」と言っても、当然のことながらシュニトケとは全く違って、バッハの清澄な世界、端正な世界がきっちりと表現されました。特に「第22番」、「第1巻 第1番」では非常に落ち着いていて聴き易く、前奏曲もフーガもとても良い演奏でした。
大きな拍手に応えてのアンコールに、エルガーの「エニグマ変奏曲」から《第9変奏》を、作曲者本人のピアノ・アレンジを演奏して、勇壮な感じで終わりました。
2人目の間世田采伽さんは、宮崎県出身。東京藝術大学附属音楽高校を経て同大器楽科を卒業。現在、大学院修士課程に在籍。第6回エレーナ・リヒテル国際ピアノ・コンクール第1位。藝大卒業時に藝大クラヴィーア賞、アカンサス音楽賞、同声会賞を受賞しています。
間世田さんも、曲目の紹介をしてから演奏に入りました。演奏はまずリストの「BACHの名による幻想曲とフーガ」です。随所に現れるBACHのテーマがよく分かり、大変面白い演奏でした。強音では叩くような衝撃音ではなく、豊かな響きをもって弾いていました。
2曲目はハチャトゥリアンの「ピアノ・ソナタ」の 第3楽章です。速く軽やかなテンポと重く緩やかなテンポ、強奏と静寂といった表情が目まぐるしく変わって、アルメニア人であるハチャトゥリアンの面目躍如と言えるような曲を生き生きと表現していました。
次はラヴェルの「鏡」から《洋上の小舟》と《道化師の朝の歌》の2曲です。前者では波の上を漂う小舟の情景がゆったりと表現されており、後者ではリズミカルな表現や強弱のメリハリもあり、クライマックスの盛り上がりもとても楽しめました。
最後はやはりアルメニア人のババジャニアンの「ポエム」。この曲は12音技法で書かれているということですが、現代音楽ながらアヴァン・ギャルドではなく、なかなか面白みのある表現でした。
アンコールには同じババジャニアンのエレジー「ハチャトゥリアンの思い出」を演奏しました。とてもきれいなメロディックな曲で、盛り上がった後、静かに終わり、聴衆から大きな暖かい拍手が贈られました。 2人共これからが大いに楽しみなピアニストです。
(K.Y.)
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