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ニュー・アーティスト ランチタイムコンサートシリーズ 2019
奥谷 翔 & 廣田 響子 & 中迫 研
ランチタイムコンサート 開催レポート
2019年5月14日(火) 12:00〜14:10 (11:30開場)
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
5月14日の、ニューアーティスト・ランチタイムコンサート2019 in 表参道は、奥谷翔さん、廣田響子さん、中迫研さんの、それぞれの個性が光るコンサートでした。まず演奏されたのは奥谷さん。バッハ作曲《平均律クラヴィーア曲集第2巻より第14番嬰へ短調BWV883》では、均整のとれた音で、それぞれのモチーフがなめらかに受け渡され、穏やかな曲調の中に深みがありました。靄のかかった幻想的な世界観が上品な音で作り出された、ドビュッシーの《レントより遅く》に続いて、ショパンの2曲《マズルカ風ロンド ヘ長調Op.5》《即興曲第3番変ト長調Op.51》が演奏されました。リディア旋法とマズルカ、ロンドの要素が組み込まれた、マズルカ風ロンドは、躍動感にあふれ快活に演奏され、即興曲第3番は、弧を描くようなフレージングが印象的で、しなやかな演奏でした。ラヴェル《ラ・ヴァルス》では雰囲気を一変させ、壮大なスケールで、物語を見せつけられているよう。音が重なり合いうねって、複雑な色味が生み出されていました。
次に廣田さんが、ブラームスが18歳の時に作曲した《スケルツォOp.4》を、言いたいことや思いを音で表現しきるかのように、はつらつと演奏されました。ベートーヴェンの《ピアノソナタ第23番へ短調Op.57「熱情」》では、表現の対比が見事になされ、1楽章3楽章では、特に爆発的なエネルギーに圧倒されました。ホールが振動しそうなその迫力は、強力な音のつかみから生み出されているのでしょうか。2曲のエネルギッシュな曲を弾き切り、次に演奏された曲はドビュッシー作曲の《喜びの島》。タイトルにあるように、輝かしい装飾音や左手の音型で、喜びが表現されているようでした。
最後に演奏されたのは中迫さん。端正な音が印象的なバッハ作曲《イタリア協奏曲へ短調BWV971》で始まり、ドビュッシー、プロコフィエフと、幅広いレパートリーを披露されました。ドビュッシー作曲《映像 第2集》〈葉ずえを渡る鐘の音〉〈そして月は廃寺に落ちる〉〈金色の魚〉が演奏され、ドビュッシーの描写的な世界観が紡ぎ出され、ひとつの音や和音から、香り立つような、色とりどりの音でホールが包まれました。最後に演奏されたのはプロコフィエフ作曲《ピアノソナタ第4番ハ短調Op.29》。素朴でありながら影を潜める音色で、作曲家特有のテクスチャーが弾き分けられ、ペダルなどの音響によらない推進力が旋律から感じられて印象的でした。
作曲家や曲によって異なる世界観をピアノで見事に描き出された3人の若きピアニストに、会場から大きな拍手が送られました。
(W.T.)
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