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斎藤 龍 ピアノリサイタル 開催レポート
ソナタの芸術Vol.1 「名作との対峙」
2019年
2月14日(木) 19:00開演 18:30開場
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

 

 バレンタインデーを迎えてきらびやかな表参道で、たくさんのお客さんが斎藤龍さんによるベートーヴェンソナタの名作演奏を心待ちにしていました。《ソナタの芸術 Die Kunste der “Sonate”1〜悲愴・月光・熱情との対峙〜》と題された本公演ではピアノソナタ第8番から第23番までから名作3曲、ベートーヴェンが様々な趣向を凝らして作り上げた作品が並びました。

 前半は作曲家自身がタイトルをつけた《ピアノソナタ第8番ハ短調Op.13「悲愴的第ソナタ」》で幕開け。冒頭の重い和音から始まり緊張感が保たれたまま展開が行われ、曲が進むにつれ鋭さが増していきました。第2楽章は打って変わって叙情的な歌が印象的で、いくつかの層があり、その層を行き来するような音使いが魅力的で、甘美な旋律が心に染み渡りました。続く《ピアノソナタ第14番嬰ハ短調Op27-2》は作曲家自身が名付けてはいないものの〈月光〉として多くの人の心を掴んできた曲です。途切れることなく繰り返される3連符の上に浮かぶ旋律は、影を感じさせながらも気品がありました。第2、3楽章と徹底的にコントロールされた場面作りがなされることで切り替わりの印象が大きく、曲の輪郭が鮮明に。毅然とした音で白熱していく展開に惹きつけられました。

 前半二曲に比べてより技巧的である後半の《ピアノソナタ第23番へ短調Op.57「熱情」》は、モチーフが様々な展開を見せ、ドラマチック。本リサイタルで演奏された3曲はどれも感情の種類や重さが異なるようで、それぞれにあった感情表現がとられていました。アンダンテ・カンタービレでシンプルな和音から変奏が行われる第2楽章を除いて、第1楽章、第3楽章は緊張感が常にあり、せき立てられるような楽想が多く、また押さえつけるような重さというより上に引っ張られるような力強さが印象的でした。アンコールは単純な音楽の中でのやり取りが生き生きと聴こえてくるようなユーモアに溢れたバガテル(小品)、そして〈エリーゼのために〉を演奏されました。〈エリーゼのために〉をリサイタルで聴く機会はなかなかないのではないでしょうか。想いを寄せる相手への手の届かなさ、横顔を見ているような切なさが描かれているように感じられました。会場からは大きな拍手が送られ、リサイタルは締めくくられました。

(W.T.)

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