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佐々木 崇 シューマンリサイタル(全12回) 開催レポート
〜Vol.2 新しい音楽のために〜
出演:佐々木 崇(ピアノ)、伊堂寺 聡(チェロ)
2018年12月12日(水) 19:00開演 18:30開場
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
シューマンの音楽と人となりを考える機会を作り出す、佐々木崇さんによるシューマンリサイタルの第2回目が行われました。ピアノ独奏曲に限らないプログラムと、それぞれの作品への佐々木さんによる詳細な解説が、この演奏会をとても印象深くしていました。《アベッグ変奏曲 作品1》では、メロディに装飾をつけるような古典的な作曲方法とは対照的に、「作曲家が音を消すことによって聴かせる」ことを佐々木さんは強調し、弾いていない音まで聞こえてくるかのような、聞き手の想像力をインスパイアする演奏でした。次に演奏された《アダージョとアレグロ 作品70》と《幻想小曲集 作品73》では、伊堂寺聡さんを迎えてチェロとピアノの二重奏が繰り広げられました。自身の作曲手法が確立した後期に書かれたこの二つの作品において、チェロとピアノが対話しているかのような親しみある距離感で、伸びやかで深みのある音色が会場を包み込み、シューマンの理想であり幻想的な世界が現れました。ここで、第1部のアンコールとして、《民謡風の5つの小品 作品102より 第2曲》が演奏されました。
第2部では、《ダーヴィト同盟舞曲集 18の性格的小品 作品6》が演奏されました。この作品に内在する二つの性質である情熱性と夢想性を、佐々木さんは多彩な音色で演じ、最後はこの二つが組み合わさって、シューマンという作曲家を際立たせていました。この演奏に先立って、冒頭のモチーフとなっているクラーラ・シューマンの《音楽の夜会 作品6》の第5曲「マズルカ」も披露され、作曲家にとって夫人がどれほどの創作の源泉となっていたのかをより実感することができました。アンコールでは、《子供のためのアルバム 作品68より 無題》と《子供の情景 作品15より 「トロイメライ」》で、一人の作曲家の生涯を追体験するかのような、佐々木さんの緻密な工夫が行き届いた演奏会でした。
(M.S)
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