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正田 彩音ピアノリサイタル 開催レポート
《 東京公演 》
2018年9月18日(火) 19:00開演 18:30開場
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
「カワイサロンコンサート in 表参道」のNo.682は、東京音楽大学〈ピアノ演奏家コース〉の3年に在学中の若きピアニスト、正田彩音さんのリサイタルです。正田さんは2002年を皮切りに国内外の数多のコンクールで優れた成績を収め、活発な演奏活動を展開。将来が有望なピアニストとして注目を集めています。今宵のリサイタルでは、バッハからショパン、ドビュッシーにプロコフィエフまでと、幅広いプログラムで類い希な力量を発揮し、楽しいトークで始終聴衆を和ませてくださいました。前半1曲目。バッハ=ブゾーニの《コラールプレリュード“主イエス・キリスト、われ汝を呼ぶ”BWV639》で、静かに、節度ある情感を込めてのスタート。弾き終えた正田さんは、「旧ソ連のSF映画“惑星ソラリス”に使われている曲です。宇宙観を表現したいと思って弾きました」と、少しはにかみながら笑顔でトーク。親しみ易いコメントで、緊張気味な会場の雰囲気が一気にやわらぎました。(以下「 」内はトークからの引用)
2曲目はバッハの《トッカータ BWV916》。明るさ、哀しみ、自由自在に変化するフーガと、バッハ三様の魅力が集約されたような演奏でした。
そして前半を締めるのは、ショパンと、ショパンをテーマにしたブゾーニの作品。「《序奏とロンド Op.16》は20代前半の若々しいテクニカルなショパン。《幻想曲Op.49》は内容の濃い晩年のショパン。同じ作曲家なのか?と思うくらいです。ブゾーニの《ショパンのプレリュードに基づく10の変奏曲BV213a》はショパンのプレリュード Op.28-20をアレンジした作品ですが、途中から不思議な、前衛の世界へと入り込んでいきます。」
こうして弾き始めた正田さん。華やかな技巧を駆使した輝かしいショパンと、スケールの大きな円熟のショパンを熱演。会場の大きな拍手に包まれながら、「がんばります!」と力強くコメントして、難解なブゾーニの作品を見事な集中力で弾き切りました。
後半はドビュッシーの世界から、《12のエチュードより第11曲“組み合わされたアルペジオのための”》で前衛の極地を、《喜びの島》で大いなる船出へのはちきれんばかりの高揚感が表現されました。
そしてラスト。「プロコフィエフが大好きです。一番リズミカル。すごい作曲家だと思います」とのコメントの後、凄まじい演奏で会場を圧倒しました。爆発的で緻密な《トッカータ Op.11》、燃えるような野性味とロマンティシズムの《ピアノ・ソナタ第7番 Op.83》。拍手はなかなかおさまりません。
アンコール曲はラフマニノフの《練習曲“音の絵”Op.39-1》で、濃密な約2時間のプログラムが終わりました。真ん中の休憩直後のコメント「“弾いているほうよりも聴いているほうが疲れる説”というのがあります。皆さん、よく休めましたか?」をはじめ、なぜか応援したくなる、不思議な魅力をもつピアニスト、正田彩音さん。演奏の素晴らしさ、凄まじさとのギャップも刺激的ですね。今後がとても楽しみです。
(H.A.)
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