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日本ショパン協会 第285回例会
圓谷 綾乃 ピアノリサイタル 開催レポート
《日本ショパン協会パウゼシリーズ Vol.39》

2018年9月7日(金)開演 18:30 (開場 18:00)
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

  

 本日は日本ショパン協会の例会の一環として、ドイツで長年研鑽を積んできたピアニスト圓谷綾乃さんのピアノリサイタルが開催されました。プログラムは、私達に多くのリサイタルレパートリーを残しているロマン主義時代のピアノの巨匠、リストとショパンに焦点を絞ったものです。圓谷さんは2015年にドイツから日本へと活動拠点を移したとのこと。気鋭のピアニストの日本での活躍を楽しみにしてか、平日の開催にもかかわらず多くの方が来場されました。

 圓谷さんの演奏は、女性のピアニストらしい柔らかな表情がありながらも、力強い響きを備えたものでした。とりわけリストやショパンの大曲では、オクターヴによる旋律が連なりますが、そうした場面でも圓谷さんの音色は決して硬くなることが無く、優雅な曲線美を描いていました。最初に演奏された有名な《愛の夢》は、そうした旋律の曲線が非常によく浮かび上がっており、続いて演奏されました《バラード》第2番では、前曲とは対照的な力強さや切迫感がありました。前半のハイライトとなりました《巡礼の年 第2年補遺》では、3曲を敢えて間を空けることなく続け、3曲間にストーリーを感じさせてくださいました。とりわけ最終曲の〈タランテラ〉は、この舞曲がもつ粋な雰囲気とリストらしい力強さを最大限に引き出した演奏で、大きな拍手があがりました。

 後半のショパンのプログラムはハ短調の《夜想曲》から始まりました。圓谷さんはショパンの哀愁漂う旋律を際立たせながらも、やはりピアノという楽器の豊かな響きを生かして演奏されていました。そして後半のハイライトとなるのが、ショパンの作品の中でも集中力と体力を要する《ピアノ・ソナタ》第3番。やはりこちらも、楽章と楽章のあいだの間を少しずつ変えながらの演奏で、圓谷さんが作品全体をどうまとめようと考えているのが伝わってきました。1曲ずつを堅固に仕上げた第1楽章・第2楽章に対し、終盤のクライマックスに向けて切迫感を増してゆく第3楽章・第4楽章の対比も印象的で、演奏が終わった際には会場からも感嘆の声が漏れました。

 アンコールはがらっと雰囲気を変えてドビュッシー《子供の領分》第1番と、意外な選曲でした。しかしながら、最後の最後まで圓谷さんの高い技術と繊細な表現を楽しむことが出来ました。ピアノという楽器の魅力に存分に浸ることのできた、充実のリサイタルでした。

(A.T.)

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