今回のランチコンサートでは、千葉さんによるオール・ショパンのプログラムが組まれました。まずは、《ポロネーズ
第7番 変イ長調「幻想」
Op.61》です。冒頭の低音域の和音から単音で高音域に上っていくところでは、海の底に沈んだ音が水面に向かって浮かんでいくような優しい気分になりました。《ノクターン第1番
変ロ短調
Op.9-1》では、左手の分散和音が、右手のはかない旋律を支えるにとどまらず感情をかき立てる役割を果たしており、聴衆は激情の渦に飲み込まれました。続いて《バラード
第4番 ヘ短調
Op.52》の作曲家の心の叫びを表すかのような最終場面で、特に運指の難しい短3度での半音上行の連なりを片手で奏する箇所を、ものともせずに滑らかに美しく仕上げていました。最後の《スケルツォ
第4番 ホ長調
Op.54》では、この作品のイメージとして千葉さんがおっしゃっていた「晴れ晴れとした喜びの感情」を見事に表現し、豊麗な音の輝きとともに叙情的な旋律が鐘のように響きわたっていました。
アンコールはショパン《エチュード Op.25-1
「エオリアン・ハープ」》でした。聞き馴染みのある旋律を心地よく届けてくださる、千葉さん特有の聴き手を安心させる魅力がよく反映された演奏会でした。
(M.S)