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日本ショパン協会 第284回例会
𠮷武 優 ピアノリサイタル 開催レポート
《日本ショパン協会パウゼシリーズ Vol.38》

2018年7月6日(金)開演 18:30 (開場 18:00)
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

 

 今回の演奏会では、音楽における「デモーニッシュ(悪魔的)」なキャラクターを表現することに挑戦した吉武さん。明確な形式の中に即興的性質を秘めたショパンの音楽と、情熱的と夢想的との微妙な矛盾に音楽を介在させたシューマンの音楽をプログラムに据え、二人の作曲家が示す音楽外的な詩的幻想を、一体どのように浮かび上がらせるのか、好奇心を持って開演を待っていました。

 前半の演目にはすべてショパンの作品が並び、まずは《4つのマズルカ 作品24》で始まりました。マズルカに見られる民族的リズム、たとえば4分音符にタイが付いて8分音符の長さが延長された第一音目の直後に16分休符が突如現れるといった第1曲目の冒頭のリズム、を演奏者は腕を脱力させて無駄のない身体の動きで音楽を自在に操っていました。次の《バラード 第3番 変イ長調 作品47》は、この曲がもつ物語性を語り手の立場として、次のソナタに情念を継承させているような演奏でした。続いて、《ピアノソナタ 第2番 変ロ短調 作品35「葬送」》では、何かに追い立てられ脚がもつれていくような焦燥感、半音移動などの音型に込められた切ない思いや深い悲しみ、この二つの感情が拮抗した吉武さんの演奏に、思わず背筋が凍りました。

 後半は、特に吉武さんの思い入れが強い楽曲であるシューマン《クライスレリアーナ 作品16》が演奏されました。鋭い緊張感が常に演奏者の周りに立ちこめていました。第4曲の右手の旋律の減7度の下降(Es-FisやB-Cis)の不協音への違和感を確認するような丁寧な楽曲分析が裏付けられた緻密な演奏が、非現実的なおぞましさを演出していました。アンコールは、ショパン《エチュード集 作品25 第1番「エオリアンハープ」 変イ長調》と、ドビュッシー《ベルガマスク組曲 第3曲「月の光」》でした。吉武さんの奏でる音色の幅広さにも魅了された演奏会でした。 

(M.S.)

 

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