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2017年ピティナ・ピアノコンペティション特級入賞者コンサート
開催レポート
出演 片山 柊・三重野 奈緒
2018年7月5日(木) 開場 18:30 開演 19:00
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
7月上旬、「2017年ピティナ・コンペティション 特級入賞者コンサート」が開催され、片山柊さん(グランプリ・聴衆賞)と三重野奈緒さん(銀賞)が登場されました。それぞれの個性が前面に押し出されたプログラムで、充実した2時間となりました。前半の演奏は三重野さん。ショパンの《ボレロ ハ長調》Op. 19とシューマンの《ピアノ・ソナタ第1番 嬰へ短調》Op. 11、アンコールにはショパンの「24の前奏曲」Op. 28より《第17番 変イ長調》が披露されました。特にシューマンのソナタは、骨太な音色で情熱的に奏されており、息の長いフレーズも満ち充ちたエネルギーで最後まで歌い切る力強い演奏が印象的でした。第4楽章では、対照的な2つのキャラクター(激しい性格のフロレスタンと抒情的なオイゼビウス)が巧みに弾き分けられており、息もつかせぬ怒涛のフィナーレはシューマンの妻に対する駆り立てるような「ただ一つの心の叫び」(シューマンのクララ宛ての手紙)を思わせる激しいものでした。
後半の演奏は片山さん。クープラン《パヴァーヌ 嬰へ短調》、細川俊夫「エチュードI-VI ピアノのための」より《II. 点と線》、リゲティ「ピアノのためのエチュード」より《開放弦》《金属》、デュティユー《ピアノ・ソナタ》Op. 1、アンコールにはショパンの「24の前奏曲」Op. 28より《第7番 イ長調》が、簡単な作品解説を挟みながら披露されました。片山さんが「書道を連想させる」作品だと話していた細川俊夫の《点と線》は、実際に音が鳴っている時間だけでなく、音のない時間も非常に重要な意味をもつ作品です。彼の演奏はその沈黙の瞬間の面白さをしっかりと感じさせてくれる好演で、透明感のある美しい音色と多彩な響きで作られていく音響空間に心地よく浸ることができました。また、デュティユーのソナタでは、繊細さとダイナミックな躍動感が絶妙のバランスで生み出されており、それを可能にする鮮やかな指さばきは圧巻でした。
(Y. T.)
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