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小井土 文哉 ピアノリサイタル 開催レポート
《 桐朋学園 表参道 サロンコンサートシリーズ Vol.39 》
2018年6月20日(水) 開場18:30 開演 19:00
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
《桐朋学園 表参道 サロンコンサートシリーズ》のVol.39は、同大学ソリスト・ディプロマコース1年に在学中の小井土文哉(こいど・ふみや)さんのピアノリサイタルです。小井戸さんは2015年の第48回カワイ音楽コンクール・ピアノ部門ソロの部Sコースで大賞を受賞するなど、既に国内外のコンクールや演奏会で活躍し始めています。今宵のプログラムは、バッハから古典派、ロマン派を経てスクリャービンへと、幅広い構成。プログラム・ノートには各曲に対するイメージや思いが、率直な言葉で綴られていました。「解説」ではない、「弾き手のイメージ」が綴られたプログラム・ノートの言葉の一つ一つは、私たち聴き手にとって、実際に聞こえてくる演奏とダイレクトに繋がって、その演奏をより印象深いものにすることがあります。小井土さんの演奏と言葉は、そのような力があると感じました。
1曲目。バッハの『平均律クラヴィーア曲集より 第1巻 第4番 嬰ハ短調 BWV849』。自然さが心地良いプレリュードと、壮大な礼拝堂で聖歌隊が声高らかに歌い上げているような感動的なフーガでした。プログラム・ノートに綴られていたのは、「…人間的なプレリュードと、巨大な宇宙のような空間、絶対的なものを感じさせるフーガ…」(以下、プログラム・ノートからの引用は、「 」でくくります)。なるほど、と納得しました。
2曲目。ハイドンの『ソナタ第33番 ハ短調 Hob.XVI:20 Op.30-6』。細やかな感情の起伏を表すかのような第1楽章、伸びやかかつ細やかな第2楽章、シャープな第3楽章。一つ一つの音に意味を見出す、そんな気迫を感じました。
3曲目。ブラームスの『自作主題による変奏曲 ニ長調 Op.21-1』。芳醇なテーマが、夢を見ているかのように次から次へと変奏されていきます。幻想的に、峻厳に、激しくと、幅広い変容を見せる変奏曲。プログラム・ノートには、「…変奏曲という形式をとって、1人の人間の人生の回想を表しているような曲…」。確かに、そのように捉えることもできますね。
休憩を挟んで最初の曲は、リストの『超絶技巧練習曲より 第11番“夕べの調べ”変ニ長調 S139/11』。意味深な始まりからドラマティックな歌へと、巨大なスケール感。 プログラム・ノートには、「…少し異質で、捉えるのは難しい事だと思います。夕暮れに漂う空気のようなものです。」とあり、チャレンジングな曲なのだということが分かりました。
そして、最後の曲。スクリャービンの『ソナタ第3番 嬰ヘ短調 Op.23』。第1楽章は、深い哀愁から甘い夢のような音色へ。スクリャービンの音のパレットの幅広さを感じます。第2楽章は無機質なテイストとどこか色っぽいテイストとが対峙して、個性的。第3楽章は束の間のまぼろし。プログラム・ノートにも「…第3楽章の美しさは何にも代え難いものがあります。」とされていました。第4楽章はここまでの全てを包括するような、感動的なエンディングでした。
アンコールはショパンの『練習曲 変ホ長調 Op.10-11』。竪琴を優しくかき鳴らすかのような美しいアルペッジョが素敵でした。
小井土文哉さんのこれからが、楽しみになりました。
(H.A.)
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