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佐々木 崇 シューマンリサイタル(全12回)開催レポート
〜Vol.1 詩人は歌う〜
出演:佐々木 崇(ピアノ)、碓氷 昂之朗(テノール)
2018年
6月8日(金) 19:00開演 18:30開場
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

 

 

 ピアニストの佐々木祟さんのシューマンリサイタル全12回シリーズの第1回目となった6月8日。今回は〈詩人は歌う〉というテーマをもとにシューマン初期のピアノ曲と歌曲が披露されました。

 まず演奏された《トッカータOp.7》は、シューマンが20歳直前にフランクフルトで聴いたパガニーニの超絶技巧に感動し、その重音奏法に着想を得て作曲した曲だそうです。絶え間なく現れる重音の連続を軽やかに演奏され、華やかな幕開けとなりました。

 次にシューマンのピアノ曲最高傑作の一つである《交響的練習曲Op.13》、今回は初版楽譜に遺作の5曲を組み込んだ全17曲が演奏されました。どの曲もシューマンらしい歌を持ちながら、タイトルにあるように交響曲のような多彩な音色で、明快なタッチと和音には迫力がありました。また印象的だったのは全体と少し雰囲気の異なる〈遺作第5番〉。非和声音が散りばめられて歌が紡がれ、端正で美しい音の粒に夢見心地になりました。フィナーレの練習曲12番では壮大なクライマックスが築かれ、最後まで演奏に引き込まれました。

 後半はテノールの碓氷昴之朗さんとお二人で《詩人の恋Op.48》を披露されました。「歌の年」と呼ばれるシューマン30歳の時に作曲された数々の曲の代表作であるこの曲は、ハインリヒ・ハイネの詩に基づいて詩人の恋の回想、心象風景を描き出しており、恋が憧れから失望、痛みを経て破綻に向かう様子が表現されています。喜びに溢れる気持ちを歌ったかと思えば、心のざわつきが歌われ、感情の揺れ動きが見事に表現されていました。力強く希望を持った陽の部分と音を潜め心の影が表現された部分との差によって、聴き手にとって詩の世界を理解し気持ちを寄せることのできる演奏だったのではないでしょうか。

 アンコールには《詩人の恋》と同年に作曲された《リーダークライスOp.24》より〈ミルテと薔薇で〉をお二人で、《子供の情景Op.15》より第7曲〈トロイメライ〉を佐々木さんが演奏し、シューマンの世界観を辿る演奏会をしっとりと締めくくられました。

(W.T.)

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