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中井恒仁&武田美和子 ピアノデュオリサイタル 開催レポート
サロンシリーズ Vol.11 〜音楽の花束 母へ〜
2018年
5月19日(土) 17:00開演(16:30開場)
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

 第11回目を迎えたサロンシリーズ。5月19日は〜音楽の花束 母へ〜というタイトルのもと、中井恒仁さんと武田美和子さんによるピアノデュオリサイタルが開催されました。

 まずは、モーツァルト作曲ツェムリンスキーによる連弾版の《魔笛》より、〈序曲〉、〈俺は鳥刺し〉、〈恋人か女房がいれば〉、〈パパパ〉が演奏されました。この曲はお二人にとって、モーツァルテウム音楽院のあるザルツブルクの教会の時報で耳にしたり、街で耳にしたりと思い出深い曲だそうです。オペラの表現法をピアノで再現され、華やかでダイナミックな幕開けでした。

 次に演奏された《4手のための変奏曲 ニ長調(ムーアの民謡風主題〈優しいお母さん〉による)》はショパンが16歳の作曲した曲で、ショパン唯一の連弾曲だそうです。ショパンの曲によく見られる高音のきらびやかな響き、まばゆいほどの輝きが印象的でした。次のラフマニノフ作曲の《イタリアン・ポルカ》に続いて演奏されたのは武田さんによるソロ、ドビュッシー作曲《月の光》、リスト作曲《ラ・カンパネラ》。今回のプログラムは亡くなられたお母さまに向けて作られたプログラムで、武田さんのベールに包まれたような音色の幻想的な《月の光》と超絶技巧で鐘の響きを表現している《ラ・カンパネラ》、続いて中井さんのショパン作曲《ノクターン嬰ハ短調 遺作》でしっとりと甘く悲しい旋律が奏でられ、お二人の祈るような思いが伝わってきました。

 後半は2台ピアノでブラームス作曲《ハイドンの主題による変奏曲Op.56b》を演奏されました。この曲は管弦楽版も有名であり、《聖アントニウスのコラールによる変奏曲》の別称でも親しまれている曲で変則的な小節数のテーマが特徴的です。壮大で豊かなたっぷりとした響きで、2台ピアノならではの厚みがあり管弦楽の色彩が感じられ、会場を包み込むような力強い「生」を感じる演奏に圧倒されました。

 最後に演奏されたのは三善晃の《2台ピアノのための組曲〈唱歌の四季〉》。同じものでも見ている時の気持ちによって見え方が変わる、人それぞれの四季の感じ方がある。そう武田さんがお話くださったように、誰もが聞いたことのある馴染みの曲が、普段耳にするものとは趣を変え演奏されました。アンコールはシューマン作曲《12のピアノ小品Op.85》より〈夕べの歌〉と、ブラームス作曲《ワルツOp.39-15》でした。

 音楽とともに記憶が、またその時の思いが蘇るようなプログラムで、みなさまにとっても感慨深いひと時となったのではないでしょうか。

(K.T)

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