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〜待望のソロリサイタルが福岡と東京で実現!!〜
入江 一雄 ピアノリサイタル 開催レポート
【東京公演】
2018年 2月26日(月) 19:00開演 18:30開場
会場/カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
本日は、東京藝術大学および大学院を首席で出られた後、モスクワ音楽院で研鑽を積まれた若手ピアニスト入江一雄さんによる、ピアノ・リサイタルが開催されました。今日がモスクワから完全帰国して初のソロリサイタルということで、入江さんのさらに洗練された演奏を聴こうと会場には多くの方が集まり、補助席を出すほどの満員となりました。プログラムは、前半がピアノの古典とも言うべきバッハとベートーヴェンの名作、後半が入江さんの留学先でもあるロシアにちなんだ「編曲もの」という、ユニークな構成となっていました。入江さんの演奏は、迫力がありながらも決して力に任せることのない、堅実な音楽創りが見えるものでした。最初に演奏されたバッハ《イタリア協奏曲》では、粒のそろった音運びで、華やかながらも繊細な音楽を紡ぎ出していました。続くベートーヴェンのピアノ・ソナタ《熱情》は、技術的な難所も多い大曲ですが、入江さんは1つ1つの音を量・質とも巧みにコントロールし、音楽の方向性や構成が明快に聴き手に伝わるような演奏をされていました。
後半にまず演奏されたのは、バレエ曲として有名なチャイコフスキー《くるみ割り人形》をピアニストのプレトニョフが、演奏会用に編曲した組曲です。入江さんは原曲のもつ耳なじみのよい旋律や各々の舞曲の特徴的なリズムを、適格に捉えて演奏しており、とりわけ『行進曲』での軽やかな主旋律と装飾的な走句との対比や、《タランテラ》での正確なテンポ感と質の揃った音運びは見事でした。原曲がとても有名なだけに、お客様も各々の楽曲が1台のピアノでどのように表現されるのかを、とても楽しんでいらっしゃるようでした。そしてプログラムの最後となったのは、やはりバレエを原曲としたストラヴィンスキーによる《ペトルーシュカからの3楽章》です。ストラヴィンスキーは自身のオーケストラ作品をしばしばピアノ用に編曲していますが、この《ペトルーシュカ》もやはり、多数の楽器が集まるからこそ可能であった異なる音色や調のぶつかり合いを、1台のピアノで表現することとなる難曲で、技巧的なパッセージも多々あります。入江さん自身も「編曲ものは常に原曲とピアノという楽器との間でのジレンマがあるが、トライしたくなってしまう」と語っていらっしゃいました。しかしながらそうしたジレンマを経て披露された入江さんの《ペトルーシュカ》は、むしろ1人の奏者だからこそ出来る緻密な音楽創りが見事で、各パッセージの絡み合いが正確にお客様にも伝わるものでした。
終演後盛大な拍手に押されて入江さんがアンコールに披露したのは、やはり「編曲もの」のラフマニノフ《ヴォカリーズ》と、ピアノという楽器だからこそ出来る技巧がふんだんに採り入れられたプロコフィエフ《トッカータ》。入江さんのセンスと技術の両方が光る素晴らしい演奏で、会場が最後まで大きな拍手に包まれたコンサートでした。
(A.T.)
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