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有森博&秋元孝介ピアノデュオシリーズ 開催レポート
新春のくるみ割り人形Vol.2
2018年1月11日(木) 19:00開演 (18:30開場)
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
チャイコフスキーのバレエ音楽「くるみ割り人形」と、同じくチャイコフスキーの交響曲をプログラムのメインに据えるピアノデュオシリーズの第2弾。お馴染みの仲良し師弟コンビ、有森 博さんと秋元孝介さんによる白熱のデュオで、新しい年の幕開けです。プログラムの前半は連弾で、プリモが弟子の秋元さん、セコンドが師匠の有森さん。後半は2台ピアノで、曲目によってパートをチェンジするという構成でした。連弾の冒頭は、ムソルグスキー(アルツィブーシェフ編曲)の交響詩「はげ山の一夜」です。時は真夜中。おどろおどろしい魔物たちが地下から湧き出て、飲めや歌えやの大饗宴。乱痴気騒ぎの様を、二人の奏者が激しく奏でます。狂気の夜、演奏はさらにヒートアップ! やがて空は白みかけ、清らかな朝の訪れとともに教会の鐘の音が。魔物たちは蜘蛛の子を散らすように消えて行く……というロシア民話に基づくこの名作。複雑な4手で弾くことで、魔物がうじゃうじゃいるリアル感がしっかり出ていました。出だしからマックスの迫力。
前半のメイン、チャイコフスキーの「交響曲第2番 ハ短調 作品17『小ロシア』」は、チャイコフスキー自身による連弾用編曲。「小ロシア」はウクライナの旧称の一つで、ウクライナ民謡がいくつか引用されていることから、このような愛称で呼ばれているのだそうです(秋元孝介さんの「Program Notes」による)。端正な調べから華やかな変化を遂げる第1楽章、軽やかな行進曲風の第2楽章、複雑に錯綜する第3楽章スケルツォ、堂々たる大団円を迎える第4楽章フィナーレ。時折聞こえてくる民謡の断片が、温かくて素朴。たった二人でオーケストラのぶ厚い響きを表現する、見事な演奏でした。2019年開催予定のシリーズ第3弾は、交響曲第3番を演奏したいです!とのことでした。
休憩をはさんで、後半は2台ピアノ。ラフマニノフの「ロシア狂詩曲」を第1ピアノ秋元さん、第2ピアノ有森さんで。ロシアの歌心溢れるスタートです。
続いて、ロシアの現代作曲家ローゼンブラットの「タンゴ」を、第1ピアノ有森さん、第2ピアノ秋元さんで。キッチリしたタンゴのリズムに乗って前のめり気味に奏でられる情熱のタンゴは、不協和音のパンチが効いてクールでした。
ラストはシリーズ共通のテーマ曲。チャイコフスキー(エコノム編曲)のバレエ音楽「くるみ割り人形」組曲作品71aを、第1ピアノ秋元さん、第2ピアノ有森さんで。ファンタスティックな夢の世界が、次から次へと繰り広げられていきます。『小序曲』『行進曲』『金平糖の精の踊り』『ロシアの踊り(トレパック)』『アラビアの踊り(コーヒー)』『中国の踊り(お茶)』『葦笛の踊り』『花のワルツ』。大劇場で豪華なバレエの舞台を観たかのような満足感。2台のピアノを駆使して、素晴らしいオーケストラのサウンドを創り出していました。こんなことができるのですね!
アンコールも2台ピアノで夢の続き。チャイコフスキー「くるみ割り人形」より『パ・ド・ドゥ』(秋元さん編曲)、チャイコフスキー(A.Miller編曲)「小序曲」、ラフマニノフの歌曲「ここは良きところ」。静かにロマンティックに幕を閉じたのも、素敵な演出でした。
第3弾も楽しみ。「くるみ割り人形」は必聴です。
(H.A.)
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