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日高 志野 ピアノリサイタル 開催レポート
ロシアに暮らし、ロシアに学ぶ…、
世界で活躍する気鋭のピアニスト
2017年
9月20日(水) 19:00開演 18:30開場
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

  

 カワイサロンコンサート in 表参道のNo.651は、日高志野さんのピアノリサイタルです。日高さんは東京藝術大学を経て同大大学院を修了、国内外のコンクールで入賞を果たし、現在はロシア国立チャイコフスキー記念モスクワ音楽院に在籍中で、留学して3年半となりました。

 今宵のプログラムは「人間の感情の原点ともいえる喜怒哀楽を、時代も国も違う作曲家たちがこれら一つ一つの感情に向き合い、音楽がまるで文学作品のように語りかける作品(日高さん執筆のプログラムノートより)」で構成。後半は日高さんが大好きな作曲家、ラフマニノフの作品で締めました。

 最初の曲はバッハの「イタリア協奏曲BWV971」。軽快な第1楽章、瞑想的な第2楽章、小気味良く進行する第3楽章。明るさの中に垣間見える優しさが印象的でした。

 続いてバッハ=ブゾーニ編曲の「シャコンヌ」。静寂に包まれた単旋律から大音響のクライマックスまで、ドラマティックな展開。超絶技巧、起伏の激しさが見事でした。

 前半最後の曲は、20世紀に活躍したアルゼンチン生まれの作曲家、ヒナステラの「3つのアルゼンチン舞曲」です。第1曲「年老いた牛飼いの踊り」は右手と左手との絡み方がユニーク。第2曲「優雅な乙女の踊り」はセンチメンタルなメロディーが切々と胸に迫る。第3曲「ガウチョの踊り」はアルゼンチンのメロディーがはじけ炸裂する。エネルギッシュな素晴らしい3曲でした。

 後半はラフマニノフ。名曲「ヴォカリーズ」からのスタートです。静かで情熱的で、何度聴いても胸が熱くなりますね。

 そしてラストの曲は「ソナタ第2番 変ロ短調 Op.36」。長大で複雑な初版(1913年)と、無駄を排除してまとめられた改訂版(1931年)から、初版の“どうしても捨てられない部分”を残して作った“日高さん版”による演奏です。迫力の出だしから惹き付けられた第1楽章は、時に甘美に、時に軽やかに、輝きながら壮大なドラマを織りなしていきました。第2楽章は薄いベールの向こうに見える穏やかな美。ジワジワと少しずつ感動を高めていく手法はラフマニノフならでは。第3楽章は炎の最終楽章。魅惑的なメロディーが高らかに歌い上げられ、華麗なエンディングを迎えます。日高さんの演奏はどんな時でも音が美しいところが印象的でした。

 アンコールはスカルラッティの「ソナタ L.23」。しみじみとしたいい曲で、上質なセンスを感じさせる素敵な演奏でした。今後が楽しみです。 

(H.A.)

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