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日本ショパン協会 第278回例会
藤田めぐみピアノ・リサイタル 開催レポート
〜ショパン 24のエチュード 全曲演奏〜
2017年9月7日(木) 19時開演(18時30分開場)
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
本日は日本ショパン協会例会の一環として、ピアニスト藤田めぐみさんによるピアノ・リサイタルが開催されました。演目は何とショパンの《練習曲》作品10と作品25の全曲演奏。ショパンの《練習曲》は技術面でも表現面でも、各曲かなりの精神力と体力を要するため、全曲を1日に演奏するということはめったにありません。プログラムには、藤田さんがどのようにしてピアノ演奏における自分らしい表現を発見されたか、そしてそのことをショパンの《練習曲》の演奏にどのように反映させたか、ということが丁寧に綴られ、今回のリサイタルへの熱意が感じられました。プログラムに「違和感を感じる方もいらっしゃる方もいるかもしれないが、自分がショパン本人のイメージしたと考えるものを演奏する」と書いていらっしゃいました通り、藤田さんの《練習曲》は1曲目から、他のCDやリサイタルで耳にするものとやや違いました。作品10-1はしばしば《練習曲》の中でも最も雄渾に華やかに演奏される楽曲ですが、藤田さんの作品10-1はアルペジオの音運びが大変繊細で、静かに厳かに低音の旋律を響かせるものでした。しかしながら、楽曲が進むにつれて藤田さんの繊細な音色は彼女独自のショパンの世界を創り上げていました。とりわけ前半の作品10では、作品10-6での静寂、10-8でのスムーズに流れるアルペジオ、10-9での哀しい響きは見事でした。後半の作品25では、細やかな指裁きと表現が要求される作品25-2と25-3、対して1曲の中に激しさと静けさの両極の詰まった25-10が印象的でしたが、さらに客席をぐっと惹き込んだのは、通常コンクール等では除外されることの多い作品25-7の演奏でした。この作品はいわゆる技巧を見せる演奏会レパートリーというよりは、主旋律とそれに応える装飾的な旋律の美しい、歌の要素が強い楽曲なのですが、藤田さんの演奏からは音楽と真摯に向き合っているからこその「祈り」を感じました。
この《練習曲》作品10と作品25という壮大なプログラムをこなされた藤田さんに、終演時には会場から大きく温かい拍手が贈られました。音楽と向き合い続けることの素晴らしさを感じた今日のコンサートでした。
(A.T.)
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