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クロイツァー記念会 第41回例会
クロイツァー賞受賞者による演奏会
出演:飯田 茜、八谷晃生、西村翔太郎(以上、ピアノ)
2017年7月9日(日) 開演:午後2時00分(開場:午後1時10分)
会場:東京文化会館小ホール
日本で生涯を閉じたロシア生まれの音楽家、レオニード・クロイツァー。ピアニスト、指揮者、音楽学者の肩書をもち、東京藝術大学、国立音楽大学で教鞭をとり優秀なピアニストを育て、日本の音楽界に大きな功績を遺しました。この2校に、ゆかりのある武蔵野音楽大学を加えた3校の大学院において、ピアノを専攻した首席卒業生に贈られる“クロイツァー賞”の受賞者演奏会が行われました。今回の受賞者は、飯田茜さん(武蔵野音楽大学大学院)、八谷晃生(国立音楽大学大学院)、西村翔太郎さん(東京藝術大学大学院)の3名。異なる作曲家のピアノソナタが披露されました。
飯田さんはシューベルトのソナタ第18番《幻想》。やわらかく深々とした冒頭の和音は、包まれるような心地よさです。“歌”を軸としながら、音にていねいな濃淡をつけた演奏でした。
ブラームスのソナタ第3番を演奏したのは、八谷さん。二十歳の頃に書かれた若さあふれる作品を、楽器を存分に響かせながら弾き進めます。各楽章の性格を描き分け、起伏をはっきり付けたダイナミックな印象を受けました。
最後は西村さんによるベートーヴェンの《ハンマークラヴィーア》。明朗なファンファーレにはじまり、輪郭をはっきりと提示していきます。第3楽章の中低音の重厚な音色は、より孤独感が増した音楽に感じられました。
また、この日は開演に先立ち、クロイツァー氏がドイツと日本で録音したレコードを聴くミニコンサートも開催されました。クロイツァー記念会の会長を務め、孫弟子にあたる植田克己会長が選んだ録音です。ショパン〈遺作〉、マズルカ第25番、リスト〈ラ・カンパネラ〉、ラフマニノフ《幻想的小品集》より第2曲、そして“アンコール”としてショパン〈黒鍵〉と、〈パピヨン〉の6曲を、SPレコード特有のうるおいのある響きで味わいました。植田会長の「気品性があり、とても輝かしい」という紹介どおり、どの曲からもきらめきが存分に伝わる名演奏でした。
クロイツァー氏本人と、氏にゆかりのある3校で学んだ受賞者の両方の演奏を堪能できたコンサート。クロイツァー氏も、きっと若手ピアニストの演奏に喜び、さらなる活躍を期待していることでしょう。
(R.K.)
左から、八谷晃生さん、飯田茜さん、西村翔太郎さん、植田克己先生(クロイツァー記念会会長)
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