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佐川 和冴 ピアノリサイタル 開催レポート
《 東京音楽大学 表参道 サロンコンサートVol.38 》
2017年
6月28日(水) 18:30開場 19:00開演
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

 

 《東京音楽大学 表参道 サロンコンサート》は今回38回目を迎え、ピアノ演奏家コース1年の佐川和冴さんの若々しい演奏が聴けました。観客席には学生の姿が多く、大きな期待が感じられました。

 前半はピアノ・ソナタが二曲演奏されました。初めはハイドンの《ピアノ・ソナタ 変ホ長調 Hob.XVI:52》で、心地よい疾走感で観客の心を一気に掴みました。次はベートーヴェンの《ピアノ・ソナタ 第23番ヘ短調 「熱情」作品57》で、うねるような旋律に鮮やかな指の運びが見事に同調し、卓越したテクニックに圧倒されました。

 後半は、ドビュッシーの《前奏曲集 第2集より 第7番 月の光がふりぞぞぐテラス》と《映像 第1集より第1番 水の反映》が続き、前半の古典派の作品とは全く異なる印象派の音色を演出しました。どちらの作品も、六月のじめついた空気を晴らしてくれるようなキラキラした音で、透明感のある情景が目前に現れて来ました。

 そして、ショパンの《スケルツォ 第3番 嬰ハ短調 作品39》が演奏されました。感情の起伏を感じさせながらも整理され安定したテンポで、一つ一つの音が大事に表現されており、佐川さんのリサイタルにかける深い思いが感じられました。次はショパンの《ノクターン 第5番 嬰ヘ長調 作品15-2》で、ピアニストの生み出すどこか懐かしい音が馴染み深い旋律に乗せられて、自然と心に音楽が舞い込んで来ました。

 プログラム最後はショパンの《ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調 「葬送」作品35》でした。現実に対する切なさとやるせなさに自問を繰り返すような思いと、限りなく美しく優しい音とが結合され、まさに琴線に触れる演奏でした。

 アンコールは、現代のピアニストであるアルフレート・グリュンフェルトの《ウィーンの夜会 ヨハン・シュトラウスのワルツ主題による演奏会用パラフレーズ Op.56》でした。古典派、印象派、ロマン派の演奏の後に現代の作品を据える、アイディアに富んだ選曲でした。演奏会全体を通して、いわゆる大曲が続きましたが、それを弾き遂げた佐川さんのエネルギーと若さは、これからの大いなる活躍を予感させるものとなりました。

 (M.S)

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