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デュオ・カイザーバウム 1st.Concert 開催レポート
《ベートーヴェン チェロ・ソナタ全曲演奏シリーズVol.1(全5回)》
出演/宮下朋樹(ピアノ) 海野幹雄(チェロ)
《東京 公演 》 2017年6月23日(金) 開演19:00 (開場18:30)
会 場/カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
ピアニストの宮下朋樹さんとチェリストの海野幹雄さんによる、ベートーヴェンのチェロ・ソナタ全曲演奏会シリーズ、第一回目が開催されました。お二人はそれぞれ、「樹」「幹」と木に関連するお名前であり、共に桐朋学園で学ばれたという共通点から、ドイツ語で「桐の木」を表す “Kaiserbaum”から「デュオ・カイザーバウム」を結成されました。シリーズ開始を彩る最初の演奏は、ベートーヴェンの作品《ヘンデル「ユダ・マカベウス」の「見よ、勇者は帰る」の主題による12の変奏曲 ト長調 WoO 45》でした。この作品は、運動会の表彰式などでよくかかる旋律が主題となっており、馴染みの深い旋律に頷いていらっしゃる観客が多く、チェロとピアノの音色に、まるで勇者が闊歩しているような情景が浮かびました。
次に、この演奏会のメインディッシュとも言える、ベートーヴェン作曲の《チェロソナタ 第1番 ヘ長調 作品5-1》を演奏されました。ベートーヴェンは生涯にわたって5曲のチェロ・ソナタを書き、今回演奏された第1番は初期の頃の作品で、初演はベートーヴェン自らピアノを演奏したとされています。チェロ・ソナタの「伴奏」とは言い難いほどの技巧が感じられるピアノに、そのピアノを包み込むような音のチェロが加わり、若々しさと落ち着きの両方が織り成されておりました。
後半は、まずシューマンの《幻想小曲集 作品73》が演奏されました。シューマンの心の不安定さを映し出すように、お二人の抑揚が感情を揺さぶりました。プログラムの最後は、ブラームスの《チェロ・ソナタ 第1番 ホ短調 作品38》でした。チェロの重厚かつ語りかけるような優しさのある低音と、それを静かに支えるピアノによる、大木の根のような深い広がりをもつ音楽に浸った時間でした。
アンコールにはサン=サーンスの組曲《動物の謝肉祭》より「白鳥」と、パブロ・カザルスの《鳥の歌》が演奏されました。二曲とも鳥に関連した作品ですが、水面がキラキラ反射した美しい景色と、乾いた砂漠に一羽だけいるような雰囲気の対照が面白い選択でした。次回の「カイザーバウム」の演奏会は、ちょうど一年後の夏至のあたりに行われ、どのような音楽を奏でてくれるのでしょうか。
(M.S)
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