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中井恒仁&武田美和子 ピアノデュオシリーズ 開催レポート
ピアノデュオ世界旅行 Vol.10(特別編) 〜祭り〜
2017年
5月20日(土) 17:00開演(16:30開場)
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

 

 

 2台ピアノのコンクールへの参加をきっかけに、デュオを組まれた中井恒仁さんと武田美和子さん。ソロでの演奏はもとより、“夫婦ピアノデュオ”としても18年間活動を続けています。2009年から開催している『ピアノデュオ世界旅行』シリーズは、今回で10回目。ロシア、スペイン、アメリカなど、その国を代表する作曲家による作品を紹介してきましたが、この日のテーマは“祭り”です。

 まずはストラヴィンスキー本人編曲による連弾版《春の祭典》。「この作品は、人間の本能に語り掛けてくるような音楽」と、武田さんは言います。複雑なリズムや不協和音の連続で表現された野性と原始の雰囲気は、まさに直球的な音楽でした。

 休憩を挟み、後半へ。中井さんが《春の祭典》の初演時のエピソードとして、「演奏が始まると、客席がざわつき帰ってしまった観客も多かったそうです。今日も先ほどの演奏を聴いて“帰りたい”と思った方には、次の《動物の謝肉祭》を」というお話に会場からは笑いが起きました。ピアノ2台でさまざまな動物たちを描写し、11曲目の〈ピアニスト〉では、譜面の「わざと下手に」という指示を大げさに取り入れるなど、終始遊びたっぷりに楽しませます。

 続いて披露されたラヴェルの《スペイン狂詩曲》より〈祭り〉は、連弾で。明るく突き上げるリズムに乗せ、息が合ってこその絶妙な演奏でした。

 「日本の曲をまだ弾いていないですね」と最後に披露したのは尾高尚忠がウィーンの友人のために作曲したという〈みだれ 二台ピアノのためのカプリッチョ〉。日本音階が根底に流れていますが、どこかモダンな1曲です。桜が舞い散るような流転の情景が浮かぶ、とても日本的な作品に感じました。

 アンコールは三善晃《2台ピアノのための組曲唱歌の四季》より〈夕焼け小焼け〉、ミヨー《スカラムーシュ》より〈ブラジレイラ〉でした。

 今回プログラムに入っていた作品の中には、オーケストラ版で耳にすることも多い作品もありましたが、それとはまた別な視点で作品を堪能するのも、おもしろい音楽体験ではないでしょうか。

(R.K.)

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