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ピアニスト 田崎悦子 in Joy of 室内楽シリーズ Vol.10 開催レポート
(Chamber music series Vol.10)
〜日本を代表するアーティストとヤング・アーティストのコラボレーション〜
監修: 田崎 悦子
ゲスト・アーティスト: ピアノデュオ ドゥオール 藤井 隆史&白水 芳枝
出演:田崎 悦子(ピアノ)、ピアノデュオ ドゥオール 藤井 隆史&白水 芳枝、
コンサート
2017年3月17日(金)19:00 開演(18:30開場)
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」
国内外でのご活動に加え後進の指導にも熱心な田崎悦子先生による、Joy of Chamber Musicのシリーズでは、世界を飛び回って音楽界をリードしているゲスト・アーティストと、既にコンクール等で実績を挙げつつ切磋琢磨するヤング・アーティストとが共演し、毎年たくさんのお客様を魅了してきました。今回のゲスト・アーティストはシリーズ史上初めてのピアノ・デュオ、ドゥオールのお2人(藤井隆史さん/白水芳枝さん)。そしてヤング・アーティストは大学生の平林咲子さん、高校生の岩井亜咲さんと町永早紀さん。若さあふれる音楽家の登場に会場からは思わず「可愛い!」という声も挙がっていました。最初はデュオ・ドゥオールのお二人がお得意のドビュッシー《牧神の午後への前奏曲》を披露。藤井さんの繊細な音色と白水さんの安定した響きが絶妙なバランスの、大変美しい演奏でした。それからはこの演奏会オリジナルのメンバーによるアンサンブルが続きました。ブラームス《大学祝典序曲》は2台ピアノ・8手という大編成の作品で、デュオ・ドゥオールのお二人に加え田崎先生と町永さんが加わりました。世代も音楽人生の在り方も違う4名ながら、息のぴったり合った演奏で、会場からは大きな拍手が挙がりました。
そして前半の最後ではシューベルトの《人生の嵐》が田崎先生と藤井さんのお二人で演奏されました。田崎先生が「難しい」と言いながらも絶賛されたこの作品は、シューベルトの晩年に書かれたもので、美しい音楽モティーフが濃密に絡んでいます。藤井さんと田崎先生は1つずつのモティーフを丁寧に拾い上げながら、立体的に音楽を組み立てていらっしゃいました。
後半はまず、平林さんと岩井さんがデュオ・ドゥオールのお二人とともに、ラヴェルの連弾曲《マメール・ロワ》を演奏。おとぎ話をテーマにした可愛らしい音楽の中にも、ラヴェルらしい技巧や独特のハーモニーが詰まったこの作品を、今日は4名のピアニストがかわるがわる演奏してゆきました。ピアニストの組み合わせが変わると音楽の流れや調子も微細に変わり、お客様もその変化を楽しんでいらっしゃるようでした。
そしてプログラムの最後は田崎先生と白水さんによる、リストの交響詩《前奏曲》。お二人とも力強さと繊細さを兼ね備えた音色で、オーケストラの重厚なアンサンブルを見事に表現されていました。ピアノという楽器の可能性を追究し尽くした熱演に、会場からも感嘆の声が聞こえました。
アンコールは田崎先生とデュオ・ドゥオールのお二人による1台のピアノを三人で演奏する連弾曲、ラフマニノフの《ワルツ》と《ロマンス》でした。どちらも夢想的で美しい曲で、最後までピアノによるアンサンブルの世界に惹き込まれたコンサートでした。
このJoy of Chamber Musicのシリーズは今年でもう10回目。次回はどんな素晴らしい音楽が堪能できるのか、お客様も大きな期待に胸を膨らませたのではと思います。
(A. T.)
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