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正住真智子&弘中佑子 ピアノジョイントリサイタル 開催レポート
《 東京藝術大学 表参道 フレッシュコンサート Vol.42 》
2017年2月10日(金) 18:30開場 19:00開演
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

弘中佑子

正住真智子

 雪もちらつく、晩冬の表参道。しかし、今夜のコンサートホールは、大勢のお客さんによる、外の冷気を感じさせないほどの熱気に包まれていました。会場前から列を成す皆様のおしゃべりからも、今回のピアノジョイントリサイタルへの期待を感じられました。

 まず演奏されたのは弘中さん。シューベルト=リストの《水車屋の歌》からの〈さすらい〉と〈どこへ?〉が、リサイタルの幕を開きました。シューベルトの有節歌曲の平明性と深い精神性をリストは巧みに翻案し、ピアノの魅力を十全に活かした名人芸的な変奏曲に変容させています。弘中さんは持ち前のヴィルトゥオジティで、この二つの小曲を爽やかに弾ききりました。それに続くのは、ショパン屈指の難曲である《幻想曲》。スケールの大きさと曲想の気まぐれさという特徴が、自在に表現されていました。弘中さん独奏の最後はドビュッシー《喜びの島》。フランス仕込みのエスプリに満ちた表現力と、豪快なフォルテがなんとも印象的でした。

 続けて正住さんが登場されました。シューベルトの《12のドイツ舞曲集》は、彼が創作したソナタや即興曲などの名曲の陰に隠れて、あまり知られていない佳曲です。しかし、だからこそ正住さんの意欲やプログラムへのこだわりをうかがい知ることのできるというものでしょう。ドイツの民俗的な詩情・素朴さ、そしてシューベルト的な意外な転調を、あるときは平静に、あるときは驚きをもって聴かせてくれました。リストの《巡礼の年 第1年「スイス」》より〈オーベルマンの谷〉は、リストが創始した交響詩のように雄大で、確たる物語を感じさせる一曲です。もちろんリストならではの超絶技巧にも満ちている作品ではあるのですが、正住さんの演奏からはそのことよりもむしろ、主人公の内面世界が見事に垣間見え、その点において印象的でした。

 休憩を挟んで、お二人の連弾でシューベルトの楽曲が演奏されました。まずは、《人生の嵐》。題名から想起されるような激烈な部分、対比的で、天国的に穏やかな部分、楽しげに跳ね回る推移部の巧みなバランスと、ドラマチックな変遷が、お二人の指から紡ぎだされていきます。《幻想曲》でもお二人は、変幻自在のシューベルトの楽曲の内面世界を、感情豊かに描き出していきました。前半でそれぞれ個性を発揮されたお二人が連弾することで、すばらしい化学反応が起こっていたのではないでしょうか。メロディでも伴奏でも、お互いがお互いを助け合い、あるいは競い合いながら音楽を作り上げていくさまが印象的でした。

 大喝采に迎えられて舞台に帰ってきたお二人は、「元気な曲」と前置きされ、シューベルトの《2つの性格的行進曲》から第1番を演奏されました。急速な三連符と強弱のギャップが印象的なこの曲は、ただ「元気」なだけではなく、お二人の技巧の確かさをも証明する曲でもありました。鍛え上げられた実力と確かな才気を十二分に発揮されたお二人、今後のご活躍にも期待しましょう!

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