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東京藝術大学 ランチタイムコンサート2017 in 表参道
<音楽学部1年生によるピアノジョイントリサイタル vol.13>
山中 惇史 & 吉田 サハラ ランチタイムコンサート 開催レポート
2017年3月14日(火) 12:00〜12:45(11:30開場)
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

  

 恒例の藝大音楽学部ピアノ科1年生によるお昼時のジョイントリサイタルは、本日で今年度最後。今回の演奏会にも、平日のお昼間にも関わらず、多くのお客さんが開演を今か今かと待っていらっしゃいました。

 二人のうち、まず演奏されたのは山中さん。チャイコフスキーの《ドゥムカ》と、ゴドフスキーの《J. シュトラウス2世の「こうもり」による演奏会用パラフレーズ》というプログラムです。チャイコフスキーのピアノ書法を、山中さん自身は「オーケストラの響き」と表現されていましたが、本日の演奏はまさしくその通り、オーケストラふうの音色の厚みと多彩さが印象的でした。ゴドフスキーは《ショパンのエチュードによる練習曲》など、超絶技巧のピアノ曲を書いたことで今日よく知られていますが、本日の《こうもり》のパラフレーズもその例に漏れず、超絶技巧を全面に押し出した楽曲です。しかし、山中さんの演奏からは、超絶技巧に対する労苦はほとんど感じられず、むしろワルツ王が喜歌劇に散りばめた陽気さや、ウィンナ・ワルツのたゆたうようなリズム感など、音楽そのものの美しさが全面に現れていました。ともすれば小手先の技術に終止しがちな超絶技巧楽曲を、芸術として昇華される技能と感性に、強い感銘を受けました。

 続いて演奏されたのは吉田サハラさん。バッハの《平均律》第1巻からの変ホ短調の前奏曲とフーガは、どちらもどこか厳粛な雰囲気の漂う曲です。吉田さんの演奏は、ペダルを多用しつつ、複数声部間の音色が美しく溶け合うかのようで、まるでロマン派的でモダンな、新たなバッハの魅力を感じさせる演奏でした。続くストラヴィンスキーの《「ペトルーシュカ」より3つの楽章》は、有名なバレエ曲から作曲家自身が楽曲を選択し、ピアノ独奏用に編曲した、難曲として評判の楽曲です。オーケストラの音の厚みと多色感、ストラヴィンスキー独特のポリリズムがそのまま一台のピアノに移されているという点で、奏者側には多数の音色や音形を同時に、また独立的に操る技量と耳が要求されています。吉田さんはこの楽曲をときには祝祭的に、ときには滑稽に、気持ちいいほどに豪快に弾ききっていました。

 最後のアンコールは、ジョイントリサイタルの定番ともなっている連弾ではなく、1人ずつ。「二人の仲が悪いので……」という冗談で会場の笑いを誘いつつ、まず吉田さんが土俗的な曲調で、腰の据わったショパンの《マズルカ》作品50-3、続いて作曲科ご出身の山中さんが、自作の愛らしい小曲《こどものための組曲「おばあちゃんからの手紙」》より〈憧れ〉を演奏されました。

 お二人のプログラムともに、19世紀以前の楽曲と20世紀の難曲が時代順に取り上げられる、というものでした。この両時代の楽曲の性格のギャップは、ピアノという楽器の音色や、お二人のテクニックの幅広さを証明してくれるものだったと思います。お二人の今後のご活躍にも期待してまいりましょう!

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