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《 ニュー・アーティスト シリーズ2016 in 表参道 》
第9回浜松国際ピアノコンクール出場ピアニストによる
コンサート・シリーズ 開催レポート
2016年12月27日(火)19:30開演 (19:00開場)
出演:大伏 啓太
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」
第9回浜松国際ピアノコンクールに参加された日本人ピアニストによるこのハーフリサイタルシリーズも、いよいよ今日が最終日となりました。最終回を飾ったのは、東京藝術大学大学院で勉強され、現在は同大学の講師も務めていらっしゃる大伏啓太さんです。パウゼでは顔なじみのピアニストということで、年末にもかかわらずたくさんの方が来場されました。大伏さんが選ばれたのは、バッハのパルティータ第6番とリスト《巡礼の年》(第1年:スイス)から第6曲〈オーベルマンの谷〉と最終曲〈ジュネーヴの鐘〉。バッハは現在でも親しまれている鍵盤楽器組曲をたくさん残していますが、その中でもこのパルティータ第6番は精緻な対位法と舞曲の粋なリズムが巧みに組み合わされた作品となっています。大伏さんの演奏は大変滑らかな音運びと、縦にも横にも広がる音の響きが見事でした。とりわけ最後のジーグは複雑なつくりとなっていますが、大伏さんは縒り合された音の糸の一本ずつを丁寧に読み解き、立体的に仕上げていらっしゃいました。一方の《巡礼の年》は、交響詩の確立者でもあるリストらしい物語性に富んだダイナミックな作品ですが、ここでも大伏さんの滑らかな音色と立体的な音楽創りが活きていました。〈オーベルマンの谷〉は曲が進むにつれて音楽がどんどんドラマティックに展開する楽曲ですが、大伏さんの演奏は激しいオクターブの連続などの箇所でも、旋律線が滑らかにつながっていました。〈ジュネーヴの鐘〉はピアノの音域の広さを生かした、低音域で黄昏の鐘の音が表されている楽曲ですが、大伏さんは夕闇に広がる空気のような高音と鋭いような籠ったような鐘の音を見事に引き分け、壮大な情景を表現されていました。アンコールはシューベルトの変イ長調の即興曲で、優雅に締めくくられた大変素晴らしいステージでした。
大伏さんのプログラムは、古典的な響きと上品な雰囲気で聴き手の心を浄化するような選曲で、年末に大変ふさわしいものでした。来年もどのようにお客様を楽しませてくださるのか、今後のご活躍が楽しみです。
(A.T.)
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