トップページ

コンサート情報

トピックス

概要

KMFミュージックフレンズ

CDメディア

リンク

 ホーム(ニュース) > コンサート情報 > 2016年 > 第9回浜松国際ピアノコンクール出場ピアニストコンサート > 開催レポート

《 ニュー・アーティスト シリーズ2016 in 表参道 》
第9回浜松国際ピアノコンクール出場ピアニストによる
コンサート・シリーズ 開催レポート
2016年12月26日(月)18:00開演 (17:30開場)
出演:奥谷 翔
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 日もとっぷりと暮れた18時の表参道、実力ある若手ピアニスト、奥谷翔さんによる演奏会が開かれました。

 まず演奏されたショパンの《序奏とロンド》は、ほの暗く静穏さが支配的な序奏に、きらびやかなロンドが続きます。奥谷さんは、短い序奏では十分間を持たせ、瞑想するかのように演奏された一方で、きらびやかな主部は旋律を華やかに歌い上げており、この対比が非常に効果的に感じました。この楽曲は、おそらくショパンのピアノ独奏曲の中では、やや演奏機会に恵まれない曲だと思われるのですが、それが不思議でもったいないと感じられるほどに、奥谷さんの演奏は初期ショパンの魅力を十二分に引き出していました。

 続けて、ベートーヴェンの《ピアノ・ソナタ第28番》が演奏されました。この曲はベートーヴェンの後期ピアノ・ソナタに特有の、歌謡性、深い内面性を湛えています。奥谷さんの演奏では、歌うような第1楽章、沈思熟考するかのように穏やかな第3楽章で、その側面が特に印象的に聴かれました。一方、「行進曲風」の第2楽章や、決意に満ちた第4楽章では、和音一つ一つに与えられた推進力が深く印象に残りました。ベートーヴェンの書いた一個一個の音符が、意志とエネルギーを持って突き進んでいるさまが想起され、熟練の作曲家の名人芸と研ぎ澄まされた演奏技術の鮮やかな結合をみる思いがしました。

 スクリャービンの《ピアノ・ソナタ第4番》は、序奏付きの単一楽章とも言える二楽章形式の楽曲です。第1楽章の星がまたたくような美しい旋律が、第2楽章のクライマックスで非常に効果的に用いられているという点が、この楽曲の美しさと魅力の一つです。奥谷さんはその点を効果的に演奏に活かし、主題の回帰を非常に印象的に聴かせてくれました。ピアノ作曲家スクリャービンの面目躍如とも言える多彩な色彩感と迫力を感じさせてくれる演奏でした。

 アンコールには、モーツァルトの《ロンド》K. 485が演奏されました。シンプルな中にも、ベートーヴェンに聴かれたような音楽それ自体の推進力、スクリャービンの中の色彩感が感じられる快演でした。

 全体として古典派からロマン派のプログラムの中で、奥谷さんのもつ音楽観、演奏観が遺憾なく発現されていました。繰り返しになりますが、和声の推進力と音色の色彩感は、大いに訴えるものがありました。今後のさらなるご活躍を祈念いたします。

(A.Y)

 ホーム(ニュース) > コンサート情報 > 2016年 > 第9回浜松国際ピアノコンクール出場ピアニストコンサート > 開催レポート