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藝大−ラテンとラテンアメリカ 開催レポート
<東京藝術大学ピアノ科教員シリーズvol.6>
2016年
12月21日(水) 19:00開演(18:30開場)
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

白石 光隆

松岡 淳

菊地 裕介

山田 剛史

 本日は東京藝術大学ピアノ科で教鞭をとる先生方が集い、19世紀末〜20世紀のラテンあるいはラテンアメリカ出身の作曲家達を次々と紹介してゆくという、ユニークな企画が実現されました。まだまだ日本ではこの地域の作曲家達がリサイタルのレパートリーとなる機会は少ないのですが、一方でいったんその独特なリズム感や情熱溢れる音楽に触れるとのめり込んでしまうピアニスト達がいるのも確かで、今日出演された先生方も「自分の師匠がよく弾いていらした」「先輩に教えていただいた」など様々なきっかけでラテン/ラテンアメリカの音楽に惹かれたようです。

 近年人気が出てきた20世紀スペインの作曲家モンポウによる《歌と踊り》第1番と、20世紀ブラジルの作曲家ヴィラ=ロボスの名曲《ブラジル風バッハ》第4番を演奏された白石光隆先生は、《歌と踊り》ではしっとりとした色気ある演奏を、《ブラジル風バッハ》では対照的に重厚で立体的な響きを聴かせてくださいました。特に《ブラジル風バッハ》は、バッハが多くの作品を遺した組曲の形態をとりつつも、終盤では熱狂的なサンバのリズムが現れるユニークな曲で、お客様の気分も盛り上がっていたようでした。

 〈火祭りの踊り〉で有名なスペインの作曲家ファリャによる《4つのスペイン風小品》とヴィラ=ロボス《ショーロス》第5番を力強く演奏されたのは、山田剛史先生。山田先生の音色は非常に迫力があり、ラテンの舞曲や楽器を表現した音楽にとても合っていました。一方、エネルギッシュな中にも細やかな表情づけや工夫に富んだペダリングも見られ、それらがいっそうお客様を惹き込んでいました。

 前半にアルベニスの〈タンゴ〉(組曲《スペイン》の第2曲)を大変美しく演奏された菊地裕介先生は、後半ではやはりスペインの代表的作曲家グラナドスによる大曲《ゴイェスカス》を抜粋で演奏されました。第1部第1曲〈愛の言葉〉ではナイチンゲールの鳴く愛の夜をロマンティックに表現され、第2部第7曲〈わら人形〉では人形と戯れる人々を躍動感あふれる音で表現され、会場からは大きな拍手が沸き起こりました。

 前半の最後を、スリリングなヒナステラ作曲《アルゼンチン舞曲集》、民謡風の旋律が美しいグスタヴィーノ《薔薇と柳》、アヴレウ=アムラン《ティコティコノフバー》の連続演奏で飾ったのは、松岡淳先生。《薔薇と柳》はご自身によるピアノ編曲とのことで、対訳入りのプログラムノートから先生の熱意が伝わってきました。《ティコティコノフバー》は粉を挽く農民とそれをついばむ小鳥を面白く描いた作品ですが、同時に日本のお客さんにとってもどこか聴いたことのある旋律が土台となっており、客席からも思わずクスっと笑う声が聞こえていました。後半ではアヴレウに同じくブラジルの作曲家ミニョーネ《12の街角のワルツ》第2番を哀愁溢れる音色で演奏し、再び客席を惹きつけていらっしゃいました。

 さて4名のピアニストによるラテン/ラテンアメリカ音楽をたっぷり味わった…とお客様の誰もが思ったところで、アンコールは何とラヴィニャックのギャロップマーチの1台8手(!)演奏。互いに演奏スペースを取り合ったり、一人は弾くのを止めて優雅に休憩していたり、あるいは弾くどころか踊り出してしまったりと、楽しい演出がつけられており、会場は一気に笑いに包まれました。最後の最後までお客さんへのサービスを欠かせない4人の先生方の、素晴らしい演奏会でした。

(A. T.)

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