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黒岩 航紀 ピアノリサイタル 開催レポート
《2015年 日本音楽コンクール 入賞者シリーズ》
2016年12月13日(火) 18:30開場 19:00開演
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 本日は第84回日本音楽コンクールの覇者である黒岩航紀さんによる、ピアノリサイタルが開催されました。黒岩さんは東京藝術大学を首席で卒業され、他のコンクールでも次々と優秀な成績をおさめていらっしゃる気鋭のピアニスト。その卓越した演奏を生で楽しもうと、平日にもかかわらずたくさんのお客様がいらしていました。

 黒岩さんがプログラムの最初に選ばれたのは、なんとピアノ学習者なら一度は通ったことがあるであろうモシェコフスキーのエチュード集からの2曲。この曲集を演奏会の場で採り上げるピアニストは決して多くありませんが、黒岩さんの手にかかると速いパッセージの1つ1つが生命感に溢れ、客席の皆さんもその美しさを再発見した様子でした。その次は黒岩さん自身が「旅行を意識した」と話していらした通り、ポーランドの作曲家パデレフスキの《ミセラネア》、祖国ポーランドを愛しながらもパリで生涯を終えたショパンの《舟歌》、近代フランスの代表格であるドビュッシー《前奏曲集第汪ェ》(抜粋)、《ピアノのために》と様々な演目が披露されました。黒岩さんの演奏技術は非常に高く、大きな跳躍やダイナミックなアルペジオ、そして微細なトリルも正確かつ勢いのある動きで弾き進めてゆきます。さらに、あるフレーズから次のフレーズへの間合いが絶妙で、たとえ多くの方が何度も聴いたことのある演目ですら、客席に心地よい緊張をもたらしていました。特に《前奏曲集》の特に有名な2曲〈西風の見たもの〉〈亜麻色の髪の乙女〉では、それが活きていたように思います。

 後半は19世紀ピアノ音楽の巨匠とも言えるリストの大曲を並べたプログラム。技巧的で華々しい楽曲によって、黒岩さんの演奏はますます彩りと迫力に満ちたものになりました。ピアノ愛好者に人気の《ハンガリー狂詩曲》第2番を情熱的に奏でられた後には、第6番をあたかもピアノの音が踊っているかのような躍動感で披露されました。その後のリスト=ワーグナーの《イゾルデの死》(楽劇《トリスタンとイゾルデ》の最終場面)を繊細な表現を見せ、最後に演奏されたのは《メフィスト・ワルツ第1番》。この《メフィスト・ワルツ》はピアニストにとってはお馴染みの超絶技巧レパートリーですが、黒岩さんはリスト作曲の後にブゾーニとホロヴィッツが編曲している版を選んでいらっしゃいました。19世紀から20世紀にかけて名ピアニスト達が紡いできた技術と表現が、21世紀のピアニストに受け継がれていることが窺われ、とても感慨深い演目でした。客席からは1曲が終わるごとにブラボーが跳び、ピアノリサイタルとしては異例の盛況ぶりでした。

 黒岩さんはこのリサイタルの後しばらくは修士論文の仕上げに専念され、修了への準備をされるとのこと。日本での学生生活を終えられてからの今後がますます楽しみなリサイタルでした。

(A.T.)

 

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