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宮野恭輔 ピアノリサイタル 開催レポート
《 桐朋学園 表参道 サロンコンサートシリーズ Vol.33 》
2016年
11月16日(水) 開場18:30 開演 19:00
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

 

 水曜日の夜のコンサートサロン「パウゼ」には、開場の時間から、本日の主役、現在イタリア留学中の若き新鋭、宮野恭輔さんを待ちわびるお客様の熱気に包まれていました。開演時、彼に浴びせられる熱烈な拍手が、彼にかけられるクラシック・ファンの期待を表しているようでした。

 プログラムの前半は、バッハ(ブゾーニ編曲)のコラール前奏曲《主イエス・キリストよ、われ汝に呼ばわる》で幕を開けました。低音の深み豊かで、瞑想的・宗教的な調べは、夜半の幕開けに相応しいもののように感じられました。続いて演奏された、同じ作編曲者による《シャコンヌ》は、長大でスケールの大きい変奏曲です。バッハの原曲は独奏ヴァイオリンによる《パルティータ第2番》の第5楽章ですが、宮野さんによる冒頭のテーマの演奏は、まさしくヴァイオリンで奏でているような、伸びやかなものでした。変奏は次第に複雑化し、華麗でピアニスティックな響きを帯びるようになります。宮野さんはこれらの変奏を遺憾なくダイナミックに表現されていました。

 前半最後の楽曲、ベートーヴェン《ピアノ・ソナタ第31番》は、大作曲家の後期の名曲としてよく知られているものです。第1楽章の歌唱的な主題の演奏は表情に富んでおり、楽曲の奇をてらわない美しさをそのまま体現するものでした。第2楽章は一転して激したスケルツォです。とりわけ印象的だったのが中間部で、何かにせっつかれるような上声部のパッセージが巧みに表情付けされていました。第3楽章は重厚で悲しげな「嘆きの歌」と、巧みなフーガ部分が交互に現れる楽章ですが、宮野さんは爽やかにこれを弾ききってみせました。

 前半と一転して後半は、フォーレとショパンによる、繊細で華麗な楽曲が並ぶものでした。宮野さんは、フォーレの《夜想曲》から第4番、第6番を選ばれました。第4番は、穏やかな旋律と優しげな和声が組み合わされた曲です。続いて演奏された第6番は、「ノクターン」でありながら劇的な響きと構成を持つ楽曲です。どちらにも共通するフォーレ特有の立体感のある和声進行と、上声部の歌が、音楽が進むに連れてその姿を変えながら色鮮やかに目の前に立ち上がってくるようでした。

 続くショパンの《ポロネーズ第1番》は、今夜の演奏会のクライマックスと言えるでしょう。英雄的で内なる熱情が湧き出てくるような主部は華麗で堂々と、一方で、長調で単純ながらもどこか悲しげな中間部は美しく感情豊かに弾ききっていました。《アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ》は、前半のアンダンテは水がサラサラと流れるように流麗に、また後半は題名を体現するかのように輝かしく華麗に、持ち前のヴィルトゥオジティを十二分に発揮されていました。

 再び、そして三度、割れんばかりの拍手に迎えられ、宮野さんはアンコールではメンデルスゾーンの《無言歌集》から〈エレジー〉を演奏されました。バッハやベートーヴェンで聴かせてくださった、深みある旋律の美しさを聴かせてくれる、魅力ある演奏でした。

 華麗な名人芸も深遠な表現も弾きこなす宮野さん、今後のご活躍も楽しみです。

(A.Y.)

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