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後藤 育慧 ピアノリサイタル 開催レポート
2016年
10月28日(金) 19:00開演 18:30開場
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 10月28日パウゼにて後藤育慧さんのリサイタルが開催されました。後藤さんは、ピアニストとして幅広くご活躍される傍ら、昭和音楽大学で教鞭を執っておられます。また、心理カウンセリングの視点を用いた独自の指導法に定評があり、各地で展開されている公開講座「指導者の効果的な言葉がけ」シリーズでは毎回好評を博しておられます。

 今回のプログラムは、J.S.バッハ《ゴルトベルグ変奏曲》BWV988。会場は非常にたくさんのお客様で賑わっておりました。

この曲の魅力や聴きどころが温かな文章で綴られた後藤さんご自身によるプログラムノートなど、細やかなおもてなしが感じられるアットホームな雰囲気の中、開演を待ちました。

 照明が落とされ、穏やかな笑顔で登場された後藤さん。この変奏曲の主題となるアリアの演奏が始まると、オルゴールのような音色に包まれました。後に続く30の変奏もそれぞれが魅力的な演奏で、約1時間半に及ぶ演奏時間があっという間に感じられたほどでした。筆者がとりわけ印象に残ったことを以下に述べさせていただきます。

 この変奏曲は、本来2段鍵盤のチェンバロのために作曲されております。

例えば、繰り返しの時に、強弱や音色を変化させたり、オクターヴ上の音域で演奏をされるなど異なった表情で表現されていたことや、右手と左手が交差しながら動く変奏での音の交わり方などから、2段鍵盤の上鍵盤と下鍵盤の音色の対比を感じられました。その他にも、アーティキュレーションや装飾も細やかに表現されるなどチェンバロらしさが活かされておりました。そればかりでなく、各変奏ごとにピアノの音色の特質とペダルが効果的に用いられ、チェンバロとはまた一味違った美しさと面白さも感じられました。

 また、「フランス風序曲」、「ポロネーズ」、「ジーグ」など、当時盛んだった様式の拍子やリズムの特徴が鮮明に表現されていたこと、短調の変奏でのラメントなどの修辞的な表現の美しさ、対位法的な変奏での声部の表情豊かな表現も印象的でした。中でも3つの変奏ごとに登場するカノンについては、「横のライン(メロディ)と縦のライン(和声)、これが横糸と縦糸で織られた織物のように、編まれていきます。」とプログラムノートで述べられており、第6変奏では唐草模様のように、第9変奏ではレースのように、第27変奏では幾何学模様のように、それぞれのカノンで異なった模様の織物が音で繊細に編まれてゆく様子は大変美しく思いました。

 最終変奏の親しみの溢れるクオドリベットを経て主題のアリアの演奏が終わり、穏やかにお辞儀をされた後藤さんへ客席から熱い拍手が贈られました。後藤さんの作品へ対する真摯な姿勢、深い愛情がひしひしと伝わった心温まるリサイタルでした。

(K.S)

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