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日本ショパン協会 第276回例会
岸 美奈子 ピアノリサイタル 開催レポート
〜時代を超えるプレリュード〜
2016年10月25日(火) 開場pm6:30 開演pm7:00
会場:東京文化会館小ホール

 

 

 本日は日本ショパン協会例会の一環として、岸美奈子さんによるピアノリサイタルが開催されました。演奏会全体のテーマは「前奏曲」。ラフマニノフの通称<鐘>、ドビュッシーの<亜麻色の髪の乙女>、ショパンの<雨だれ>など、前奏曲というジャンルにはよく耳にするピアノ曲も多々含まれていますが、このジャンルが演奏会で全面的に採り上げられる機会は限られています。しかしながら、特にこのジャンルの口火を切ったとも言えるショパンの《前奏曲集》は、全曲揃うことで個々の曲を聴くときとはまた違う魅力を放ちます。本日のプログラムは後半のメインにショパン《前奏曲集》全曲演奏を控え、前半には日本でもポピュラーなラフマニノフの前奏曲4曲と、近年まで存命だったディティユーの前奏曲3曲を持ってきた、まさに「前奏曲再発見」と言えるような内容でした。

 前奏曲は比較的短い作品が多く、限られた時間の中に作曲家の持ち味が凝縮されています。よって演奏家にも、限られた時間で旋律やリズムの特徴と面白さを精一杯際立たせることが要求されますが、岸さんはそんな前奏曲を見事に仕上げることの出来るピアニストでした。岸さんの演奏は音の量質ともに非常にコントラストが効いていて、聴き手を「次はどんな音が出てくるだろう?」とワクワクさせます。とりわけ最初に演奏されたラフマニノフの前奏曲<鐘>では、厳かな鐘の音や、その音が静寂な空気を漂う様が、目に浮かぶようでした。ディティユーの前奏曲は、ロマンチックで神秘的なラフマニノフの作品とは対照的に、精巧に正確に音の図形が組み立てられた曲ですが、こちらも岸さんは楽曲の仕組みを的確に捉え、かつそれを聴き手に伝わるように演奏していらっしゃいました。特に第1曲<影と沈黙から>は鋭い強弱の変化が、第3曲<対比の遊び>では反行する音型のリズム裁きが見事でした。

 後半は万華鏡のように音の色彩が変化する、ショパンの遺作の前奏曲2つの後に、いよいよショパン《前奏曲集》の全曲演奏。冒頭でもお話した通り、ショパンの《前奏曲集》は通して演奏されることで個々の曲に注目していた時とは違う発見があるのですが、岸さんの《前奏曲集》の演奏は、あたかも24曲の間に何か物語が存在しているかのような、有機的なものでした。もちろんこの24曲は全て調が異なるだけではなく、曲の性格や音楽パーツも全て異なるわけですが、それら全てが巧みに起伏を描くことで、24曲が一つの大きな作品になります。終演後にはブラヴァの声が上がり、アンコールにはショパンの<パガニーニの思い出>と<マズルカ>が演奏されました。岸さんのピアノ演奏の魅力と、前奏曲の面白さを存分に味わった、大変素晴らしいコンサートでした。

(A. T.)

 

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