トップページ

コンサート情報

トピックス

概要

KMFミュージックフレンズ

CDメディア

リンク

 ホーム(ニュース) > コンサート情報 > 2016年 > 田中正也 プロコフィエフの「ソナチネ」 > 開催レポート

田中正也プロコフィエフピアノ曲全曲演奏シリーズ
“エクスクールスィャ”最終章vol.2
田中正也 プロコフィエフの「ソナチネ」 開催レポート
2016年9月27日(火) 18:30開場 19:00開演
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 

 本日はプロコフィエフ作品のスペシャリスト、田中正也さんによるピアノリサイタルでした。田中正也さんはこれまでも、プロコフィエフをテーマとしたコンサートやレクチャーを重ねており、ここパウゼでもすっかり顔なじみのピアニストです。今回は、よく演奏されるプロコイエフの技巧的な演奏会レパートリーに加え、日本ではめったに演奏されない作品も披露されるということで、平日の開催にもかかわらず多くの方が集まりました。客席にはロシア出身の方も多く見られ、挨拶や作品解説は日本語とロシア語の2か国語で行われました。

 前半は配布されたプログラムとはやや順番を変え、<4つの小品>で幕開けとなりました。実はバレエを観に行くのがとてもお好きだという田中さん。プロコフィエフらしい鋭い響きを彩る舞曲のリズムを、丁寧に捉えて演奏していらっしゃいました。特に第3曲<ガヴォット>は妖艶な響きが印象的でした。そして次に演奏されましたのが、今回の演奏会のタイトルにもなっております2つの《ソナチネ》。ソナチネと言いますと、楽曲の構成もコンパクトであることから、ピアノ学習の初期ステップのための曲というイメージが強いのですが、プロコフィエフのソナチネはむしろ、この小さな枠組みに彼の緻密な音楽を詰め込むのは窮屈だったのではと思ってしまうほど、たくさんの音楽要素が凝縮されています。田中さんの演奏はその詰め込まれた音楽要素を一つ一つ取り出し、立体的に組み立てなおした大変堅実なもので、客席の皆さんもとても演奏に集中して耳を傾けていらっしゃいました。演奏の終わりには感嘆の声もあり、田中さん自身もこの作品の魅力が伝わったことにホッとした表情でした。

 前半の最後はプロコフィエフの作品の中でも非常に華があり、かつ技術的に難曲でもある《エチュード》作品2。1曲だけでも大変な技術と体力を要する楽曲で、生演奏で全曲を聴ける機会はそうない作品ですが、田中さんは今日なんと全曲演奏に挑戦。このエチュードもやはり、各曲とも長さの割に非常に濃厚な内容ですが、さらに全曲通して聴くとまた違う音楽の物語が開けてゆくようでした。

 後半の最初は、今ではめったに演奏されないものの、プロコフィエフ自身は好んで弾いていたという《そのもの自体》。緻密さの中にも即興的な要素があるこの曲の特徴をよく捉えた演奏でした。そして後半のメインとなったのが、プロコフィエフの晩年の作品である第9番のピアノ・ソナタ。各楽章の最後が次の楽章の主題となる循環形式で書かれていて、直前の3つのエネルギッシュなソナタとはまた違う魅力のある、哲学的な作品です。そのぶん魅力的に人に聴かせるのが難しい作品でもありますが、田中さんは楽譜から読み取れるアクセントや抑揚を充分に引き出し、最後までお客さんをプロコフィエフの世界に引き込んでいらっしゃいました。アンコールはプロコフィエフの《ハープ》に続き、そのままプロコフィエフかと思いきやリストの《ラ・カンパネラ》でしたが、これもまた素敵な演奏で、最後まで田中さんの音楽の引き出しの多さに圧倒されたコンサートでした。

(A.T.)

 ホーム(ニュース) > コンサート情報 > 2016年 > 田中正也 プロコフィエフの「ソナチネ」 > 開催レポート