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末永 匡 ピアノリサイタル 開催レポート
2016年9月8日(木) 19:00開演 18:30開場
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
少しずつ秋らしい風が感じられるようになった9月初旬、末永匡さんのピアノ・リサイタルが開催されました。この日はあいにくの雨模様にもかかわらず会場は満席。開演前から多くの方が末永さんの登場を心待ちにしている様子がうかがえました。今回のプログラムは、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ3曲(第7番、第8番「悲愴」、第23番「熱情」)と《エリーゼのために》、シューマンの《子供の情景》、ショパンのノクターン2曲という、ピアノの名曲が並ぶ構成でした。なかでもベートーヴェンは、末永さんが「ぜひやりたい、やらなければならない」という気持ちから、今回のプログラムに組み込んだものだそうです。「やればやるほど、ベートーヴェンを弾いているというより、自分自身を見ているよう」で、ときに「濁流に飲み込まれそうになる」、「ベートーヴェンは一番身近な作曲家であると同時に、一番深くて、わからない作曲家」ともお話されていました。
そのように「近くて遠い」ベートーヴェンが20代で作曲した「悲愴」ソナタの第1楽章冒頭、末永さんの奏する深くて重い、音の芯を捉えた和音が印象的に響いていました。この曲全体を通して、弱音部分でのパッセージはその都度絶妙なニュアンスを醸し出しており、ffでの厚く力強い響きには鬼気迫るものを感じました。プログラムの最後には、ベートーヴェン30代の作品「熱情」が演奏され、とくに最終楽章では曲の展開と共に会場の緊張感も一緒に高まっていくようでした。また、ショパンのノクターンでは、哀愁に満ちた旋律が実に表情豊かに歌われていたほか、アンコールで演奏されたリストの《バラード第2番ロ短調》では、その圧巻の演奏にこの日一番の拍手が送られていました。
(Y.T.)
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