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有森博&長瀬賢弘ピアノデュオシリーズ 開催レポート
ロシア秘選集 Vol.4「華」
2016年7月31日(日) 15:00開演
出演:有森 博(ピアノ) 長瀬賢弘(ピアノ)
共演:秋元孝介/ピアノ 高井玄樹/ピアノ
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

  

 

 2013年から続いている有森さんと長瀬さんによるデュオ・コンサートは、「秘選集」と題されるほどのユニークな選曲と、お二人の確かな実力が大好評を博しているシリーズです。本日の公演チケットは事前に完売、ホール内は開演前から満員のお客様の熱気に包まれていました。

 プログラム前半は有森さん、長瀬さんによるピアノデュオ。全曲、ロシア(旧ソ連)の作曲家ブベリニコフによる西欧の名曲の編曲というプログラムでした。原曲のジャンルも《演奏会用組曲「カルメン」》はオペラ、《7つのスペイン民謡》は歌曲、《道化師の朝の歌》は独奏ピアノ曲といったように幅広く、ブベルニコフの編曲も、それら原曲を単に2台ピアノへそっくり移し替えるだけではなく、二人のピアニストそれぞれの技巧や息のあった掛け合い、そして音域やダイナミクスの組み合わせの多様さといった、ピアノデュオ特有の性格が発揮されるように自由に楽曲を組み替える部分もあり、巧みな「翻案」とも言えるでしょう。

 後半はお二人に有森さんが指導する若いピアニスト、秋元孝介さんと高井玄樹さんのお二人を加えた2台8手の珍しい編成で、ロシア人作曲家によるオリジナル曲が演奏されました。テプリャコフの《8手の為の7つの小品》は2003年に作曲された現代音楽ですが、各楽曲にわかりやすいコンセプトや標題があり、非常に明快に聴くことができました。とりわけ朗々たる主題が複雑な伴奏とともに変化していく第5曲の「変奏曲」と、8つの手から紡ぎだされる声部の掛け合わせの妙が遺憾なく発揮された第7曲の「カノン」が心に残りました。続くウスペンスキーの《グリンカの主題によるトッカータ・ファンタジー》は、19世紀のロシアの作曲家グリンカによる歌曲《ひばり》の主題に基づいた楽曲です。《ひばり》の旋律は各所に顔を出しますが、むしろそれを現代音楽作品として一種の皮肉めいて(?)「脱構築」する作曲者の手腕が光る曲でした。後半プログラムの最後にはバラキレフの交響詩《タマーラ》の作曲者自身による編曲版が演奏されました。言われなければこちらがオリジナルではないかと思わせるほどピアニスティックな技巧が凝らされ、かの難曲《イスラメイ》の作者の面目躍如と言っていい作品でした。

 アンコールは2台8手のペアを交換しながら、なんと三曲も聴かせてくれました。まずはヴァディム・ビベルガンによる《演奏会ポルカ「ノラ」》。華やかで分厚い不協和音とコミカルなパッセージの妙が印象的でした。続いてはバッハの《ブランデンブルク協奏曲第3番》第1楽章の8手編曲版。最後にハチャトゥリャンの《剣の舞》の8手版が華やかに演奏会を締めくくると、満員の会場は大喝采に包まれました。

 二台のピアノ、そして2人あるいは4人の奏者の間で、旋律・対位法声部・伴奏などの要素が巧みに組み合わされることによって作り上げられる音響の立体感は、本日の演奏者の方々の息のあった演奏、そして磨き上げられた技と感性を感じさせるものでした。副題に漢字一文字の「華」が掲げられていた本日のコンサートでしたが、それも言い得て妙、まさしく2台ピアノという編成の絢爛華麗さを最初から最後まで堪能できる素晴らしい演奏会でした。

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