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2015 ピティナ・ピアノコンペティション
特級 入賞者コンサート開催レポート
[出演] グランプリ/篠永紗也子、 銀賞・聴衆賞/小塩真愛、 銅賞/田母神夕南
2016年7月29日(金)19:00開演
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
出演:篠永紗也子(ピアノ)、小塩真愛(ピアノ)、田母神夕南(ピアノ)
田母神 夕南さん
小塩 真愛さん
篠永 紗也子さん
本日は、日本国内で最も有名なコンクールの1つとも言える、ピティナ・ピアノ・コンペティションの特級(最上級)で、金賞・銀賞・銅賞に輝いた3名の若手ピアニスト篠永紗也子さん、小塩真愛さん、田母神夕南さんによるジョイントリサイタルでした。会場には現在ピアノ演奏の研鑽を積んでいらっしゃる/教鞭を取っていらっしゃる方々もいらしたようで、本日出演されている3名のピアニストの活躍が、日本の音楽界にとって大きな励みになることと思われます。最初に登場されたのは、昨年銅賞の田母神夕南さん。情熱的で迫力のある音楽創りが特徴的な田母神さんは、前半のメインのプログラムをショパンの《幻想ポロネーズ》とされていました。序盤の和音から重厚な音と荘厳な雰囲気が漂い、客席を惹きつけていらっしゃいました。そして後半のメインとなったのが、なかなか生で聴く機会のない、メシアンの《幼子イエスに捧げる20のまなざし》第10番。メシアンのピアノ曲は彼独自の音楽語法と難度の高い技巧が併せられたものですが、田母神さんの持前の技術と迫力で、スリリングな展開に仕上げていらっしゃいました。
二番目に登場されたのは、昨年銀賞で聴衆賞も受賞されました小塩真愛さん。アルベニスの《イベリア》第1巻、バラキレフの《イスラメイ》と、19世紀国民主義の代表作品でまとめられたプログラムでした。小塩さんの演奏は、安定した技術とそこから立ち現れる気品や優雅さが印象的でした。《イベリア》では当時のスペインの作曲家に特徴的な粋な音使いやリズムを丹念に表現されていました。《イスラメイ》では、小塩さんの技術・表現力の高さが窺われました。この作品は現在演奏会レパートリーとなっているピアノ曲の中で最も難易度の高いものの1つですが、小塩さんは1つずつのパッセージを大切に奏でつつも、舞曲としての躍動感を出していらっしゃいました。
最後に登場されたのは、昨年グランプリに輝いた篠永紗也子さん。はじめに現代音楽の代表的な作曲家であるリゲティのエチュード<白の上の白>で、レパートリーの広さを見せてくださった後には、ラヴェルを中心としたプログラムとなりました。篠永さんの演奏は音量・音質ともに大変な幅があり、様々な音の引き出しを要するラヴェルのピアノ作品にはぴったりでした。ダイナミックな演奏姿で難曲をいとも簡単に弾いているように見せてしまうところも、篠永さんの素晴らしいところ。懐古的な響きと絶え間ない音の連なりが絶妙な《クープランの墓》の第1曲・第6曲の後には、技巧的なラヴェルの作品の中でも難しいとされている《夜のガスパール》を全曲表現豊かに演奏されました。特に<オンディーヌ>のコントラストの効いた音裁きは見事でした。
終演時には、3人の素晴らしい若手ピアニストに大きな拍手が送られました。今後の日本の音楽界がますます楽しみになるようなコンサートでした。
(A.T.)
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