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クロイツァー記念会 第40回例会
クロイツァー賞受賞者による演奏会 開催レポート
2016年7月10日(日) 開演:午後2時00分(開場:午後1時15分)
会場:
東京文化会館小ホール

 

 

 ロシア生まれのピアニスト、音楽学者、指揮者として活躍したレオニード・クロイツァー。二度の国籍剥奪を経験し、無国籍となった1942年以降は日本に永住。ユダヤ人音楽家を理由に戦時下の日本でも差別を受けますが、戦後は東京藝術大学と国立音楽大学で教鞭をとり、多くの優れたピアニストを育てあげました。

 没後、門下生や関係者により『クロイツァー記念会』が設立され、同会によって制定されたクロイツァー賞は、氏が教鞭をとった先の二校と、縁深い武蔵野音楽大学を加えた各校大学院ピアノ専攻の最優秀者に毎年贈られています。受賞者演奏会は今回で40回の節目を迎え、ロビーでは写真や、1オクターヴの無音鍵盤に自筆譜など、氏の足跡をたどる遺品展も開催されました。

 まずは、梅田智也さん(藝大大学院卒)によるシューマンの《ウィーンの謝肉祭の道化》で華やかな幕開けです。謝肉祭の興奮を、粒立ちの良い音で鮮やかに表現します。2曲目は、リスト〈ノルマの回想〉。強いエネルギーと、ときに訪れる静寂。技巧面だけではなく、響きの対比で観客を惹き込みました。

 続いては、伊藤明子さん(国立音大大学院卒)によるリストの《詩的で宗教的な調べ》からの抜粋です。ダイナミックな表現のなかに澄んだ感情を感じさせる第1曲〈祈り〉、重低音の響きと繊細さを兼ね備えた第4曲〈死者の追憶〉。第7曲〈葬送〉では、曲想が変わるなか音楽を見失わず、迫りくる死の影と光を描きました。

 最後は福井敬介さん(武蔵野音大大学院卒)。まずはスクリャービンの4曲、《2つの詩曲》《3つの小品》《4つの小品》からの抜粋と、〈幻想曲〉です。一段と柔らかく奏でられた《3つの小品》の〈前奏曲〉は1分程度の曲ですが、深く記憶に残る演奏でした。締めくくりはリスト〈死の舞踏〜「怒りの日」によるパラフレーズ〉。ピアノを存分に響かせ、オーケストラを思わせる豊かな響きを聴かせました。

 「音楽は魂で感じとられるもの、音楽を理解するだけでは充分ではない。」日本の音楽界に尽くしたクロイツァー氏の言葉が深く残る演奏会でした。

(R.K.)

 

  

左から、福井敬介さん、梅田智也さん、伊藤明子さん、植田克己先生(クロイツァー記念会会長)

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