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田中あかね ピアノリサイタル 開催レポート
〜ボンの町から Vol.9 二つの葬送行進曲〜
2016年5月20日(金) 19:00開演 18:30開場
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」
田中あかねさんのピアノリサイタル・シリーズ“ボンの町から”の9回目。ボンはベートーヴェン生誕の地であり、田中さんが10年近くにわたって暮らした町であることから、毎回ベートーヴェンにまつわるプログラムが組まれてきました。今回のテーマは「二つの葬送行進曲」。ベートーヴェンとショパンの葬送行進曲がメインです。冒頭は、ベートーヴェンの「ピアノ・ソナタ第12番 変イ長調 Op.26」。この第3楽章が、葬送行進曲になっています。まず、穏やかな第1楽章は変奏曲で、ソナタ形式を用いなかったところに、ベートーヴェンの新たな挑戦が感じられます。なんて慈愛に満ちた旋律でしょう。そして第2楽章スケルツォは明るくチャーミング。ところが、第3楽章は一転して葬送行進曲。荘厳で沈鬱な曲調は、ある偉大な人物の死を悼んで書かれたといいます。重い足取りの葬列が一歩一歩進んで行く、そんな情景が思い浮かべられました。第4楽章はロンド形式で、明るく爽やか。この対比が見事です。
続いて、ベートーヴェンの「6つのバガテル Op.126」。時に勇壮に、時に美しく、時にリズミカルに……。6つの曲想がそれぞれ違った表情をみせる、小説で言えば短編集のような魅力がありますね。
休憩を挿んで、後半はショパンです。「華麗なる大ワルツ 変ホ長調 Op.18」で華やかなオープニング。「ノクターン ロ長調 Op.9-3」では揺れる思いが繊細に表現されました。
そして最後の曲、「ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 Op.35」。ショパンは、前半に演奏されたベートーヴェンの「ピアノ・ソナタ第12番」を模倣して、この作品を書いたといわれているそうです。第1楽章は焦燥感、疾走感に満ち、すごい迫力でした。ロマンティックな第2楽章を経て、第3楽章・葬送行進曲。やるせない、深い哀しみに沈む葬列……。中間部の天国的な美しさとの対比が素晴らしいと、演奏後に奏者の田中さんが語られていました。本当にそのとおりですね。第4楽章は不気味なユニゾンの旋律が、疾風のごとく駆け抜けていきました。渾身の演奏に、会場は大きな拍手で包まれました。
最後は、演奏を終えた田中さんご自身によるトーク・タイム。演奏曲目の軽い解説に練習時のエピソードなどが添えられ、和やかな雰囲気の中、楽しくお話を伺うことができました。
(H.A.)
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