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林 京平&河野俊也 ピアノ・ジョイントリサイタル 開催レポート
《くにたちサロンコンサートin表参道 シリーズ Vol.21》
2016年5月19日(木) 19:00開演 18:30開場
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
本日はくにたちサロンコンサートシリーズの一環として、国立音楽大学の大学院で研鑽を積まれた2人のピアニスト、林京平さんと河野俊也さんによるピアノ・ジョイントリサイタルが開催されました。プログラムには、リストとショパンというピアニストにとって定番のレパートリーに加え、バッハ、ベートーヴェン、シューマンとドイツにゆかりのある作曲家達の作品が並びました。先に演奏されました林京平さんは、1台のピアノから、あたかも複数の楽器パートが鳴り響いているような立体的な音楽を編み出すピアニストでした。特に、前半に演奏されたバッハの《トッカータ》嬰ヘ短調およびシューマンの初期の作品《アレグロ》は、同時に幾つもの旋律や音型を奏でなければならない部分が多く、林さんの堅実な音楽創りが活きていました。《トッカータ》では音が縦にも横にも綿密に織られてゆく様相を楽しむことが出来、会場も心地よい緊張感に包まれていました。《アレグロ》では次から次へと現れるパッセージを丁寧に捉え、コーダ部分では華やかに楽曲を締めくくっていらっしゃいました。プログラムの後半は、リスト編曲による〈イゾルデの愛の死〉(ワーグナーの代表的な楽劇《トリスタンとイゾルデ》から最終場面を抜粋・編曲したもの)と、やはりリストの超難曲として知られる〈ラ・カンパネラ〉。とりわけ〈イゾルデの愛の死〉で、分厚い音の重なりの中からイゾルデの愛を示唆する旋律が浮かび上がってくる様は、印象的でした。
後半に演奏されました河野俊也さんは、明快な音の立ち上がりと華やかな音楽創りが魅力のピアニスト。冒頭からバッハの作品の中でもとりわけ明朗な《イタリア協奏曲》で、会場の空気を盛り上げていらっしゃいました。続くベートーヴェンのピアノ・ソナタ第14番《幻想風ソナタ》は、通称「月光」で知られ、3つの楽章が各々全く違う表情を持つもの。河野さんはスリリングで華やかな第3楽章はもちろんのこと、静かな第1楽章や軽やかな第2楽章も美しくまとめ、その表現力の高さを見せていらっしゃいました。プログラムの最後に演奏されたのは、ショパンの晩年の作品であるとともに、華やかさと憂いのこもった〈舟歌〉。今日のプログラムの中でもとりわけ河野さんの音色に合っており、終演後は大きな拍手があがりました。
各々のソロ演奏の後には、お2人の連弾でメンデルスゾーンの〈スケルッツォ〉(《真夏の夜の夢》より)が披露されました。各々違う魅力を持つピアニストの共演に、会場は大変盛り上がりました。林さんと河野さんの今後のご活躍が楽しみなコンサートでした。
(A. T.)
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