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若手歌手支援企画Vol.3
若手歌手の協演 開催レポート
―ヴェルディを巡る言葉とドラマ―
2016年5月12日(木)18:30開場/19:00開演
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
ヴェルディ没後100年に有志によって設立された『日本ヴェルディ協会』。作曲家にまつわる演奏会や講演会などを通じてヴェルディ作品の普及に努めている同協会が、若手歌手の支援企画として3回目のコンサートを開催しました。前半はドニゼッティとベッリーニの作品、後半はヴェルディのみで構成されたプログラムです。ソプラノの小玉友里花さん、種谷典子さん、メゾソプラノの杉山由紀さん、テノールの又吉秀樹さん、そしてバリトンの堺裕馬さん、野村光洋さんの6名が『ヴェルディを巡る言葉とドラマ』を表現しました。
まずはドニゼッティ作品を3曲。小玉さんと堺さんの華やかな《ドン・パスクアーレ》より〈用意はいいわ〉は、オープニングに相応しい明るい二重唱です。メゾソプラノが活躍する名曲《ラ・ファヴォリータ》より〈私のフェルナンド〉は、杉山さんによるメゾソプラノならではの美しく高揚感のある表現に。
会場が沸いたのは、又吉さんと野村さんによる《愛の妙薬》より〈20スクード!〉。サングラスをかけたベルコーレ(野村さん)とオーバーオール姿のネモリーノ(又吉さん)の登場だけで笑いが起きます。ネモリーノがお金を受け取るため、入隊契約書にサインをするシーンでは「字は読めますか?」「読めない……」というやり取りを日本語で入れ、コミカルに描きました。
前半最後の2曲はベッリーニ作品。「リハーサル段階でも声を落とすことなく、1番練習した」という《カプレーティとモンテッキ》より〈ああ!僕のジュリエッタ〉は、小玉さんと杉山さんが美しく紡ぎます。そして種谷さんの《清教徒》より〈あなたの優しい声が〉は、狂乱の場で歌われるアリア。澄んだ声質でその場にいない恋人に語りかける歌が印象的でした。
後半は《リゴレット》の〈嵐がくるな〉の三重唱。今回の公演を監修され司会を務めた井上雅人さんがスパラフチーレ役で加わり、緊迫感に満ちた三重唱を聴かせました。又吉さんのソロ、《シモン・ボッカネグラ》より〈ああ、地獄だ!アメーリアがここに!〉では、ガブリエーレの露わな怒りが歌と演技から伝わります。《仮面舞踏会》からは、〈お前こそ魂を汚す者〜皆それぞれに一つの恥辱〉と〈どんな衣装か知りたいだろう〉。怒りや影が感じられる男声三重唱と、小玉さんの明るくきらめく歌声が前面に出ているもの、まったく異なる性質の2曲を堪能できました。バリトンの名アリアとして知られる《ドン・カルロ》より〈カルロよ、聞いて下さい……私は死にます〉はロドリーゴの襲撃後に歌われるものです。友人ドン・カルロを守るために自らの命をもかけるロドリーゴは、堺さんによる熱演でした。本編最後は《椿姫》よりヴィオレッタとアルフレードの心が近づくところが描かれた〈あの日僕は幸せでした〉。種谷さんと又吉さんによる二重唱は感動的でした。
アンコールは6名全員での《椿姫》より〈乾杯の歌〉、そして《ナブッコ》より〈行け、我が想いよ黄金の翼に乗って〉では、配布された譜面を見ながら、客席も歌に加わります。
「歌い手は役者でなければならない」の言ったヴェルディ。若いからこそ持ちうる情熱、みずみずしい歌声、そしてドラマとともに表現されることで、音楽がさらに立体的に感じられました。
(R.K.)
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