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東京藝術大学 ランチタイムコンサート2016 in 表参道
<大学院音楽研究科修士課程1年生によるピアノリサイタル vol.3>
冨田 楓 ランチタイムコンサート 開催レポート
2016年5月31日(火) 12:00〜12:45(11:30開場)
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

 

 

 本日の演奏会は、事前の発表から曲目が変更され、10分を越える大曲が3曲並ぶ大胆なプログラムとなりました。拍手を浴びてステージに上がった冨田さんは、まずマイクを手に取り、自分にとって「思い出深い」三曲を選んだという曲目選択の理由、そしてそれぞれの曲の構成を語ってくださいました。

 バッハの《カプリッチョ 「最愛の兄の旅立ちにあたって」》は、冨田さんが「バッハの兄へ向けた感情、兄の旅立つ先での風景がさまざまに散りばめられている」とおっしゃったその通り、様々な性格の6曲からなる組曲です。冨田さんはこれらの性格を、物語るかのように明瞭に表現されていました。また、特に終曲で、バッハの巧みな対位法書法をしっかりと消化され、内声部の旋律も美しく歌い上げながら演奏されていたのが印象に残りました。

 続くリストの《巡礼の年 第1年「スイス」》より第6曲〈オーベルマンの谷〉は、リストがセナンクールの小説『オーベルマン』からインスピレーションを受けた楽曲です。冨田さんは、主人公が「嘆く」様子から、リスト特有の「華やかさ」へと変容していく曲である、と表現されていました。冨田さんは自らの演奏で、そのような主人公の心象風景を、主題の変容をしっかり際立たせ、印象付けることで雄弁に語られていました。

 最後のショパンの《ポロネーズ第7番 「幻想」》は、舞曲調の華やかさと、晩年のショパンの痛切とも言える表現が混合されている曲です。冨田さんの演奏でとりわけ印象深かったのは、ピアノの中音域の響きが遺憾なく発揮された、テクスチャの豊かさです。それによって、音楽がより密度の濃いものとなっていると感じました。

 確かに長大な曲の並ぶプログラムでしたが、冨田さんの演奏の構成力と歌心で、弛緩する間もなくあっという間に素晴らしい時間が過ぎ去ってしまいました。華々しい《幻想ポロネーズ》の後にアンコールとして演奏された、フランスのエスプリとウィットに富んだプーランクの《前奏曲第15番 「エディット・ピアフを讃えて」》の後には、会場に昼下がりのさわやかな風が吹き込むかのようでした。

A・Y

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