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東京藝術大学 ランチタイムコンサート2016 in 表参道
<大学院音楽研究科修士課程1年生によるピアノリサイタル vol.2>
奥村 志緒美 ランチタイムコンサート 開催レポート
2016年5月13日(金) 12:00〜12:45(11:30開場)
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

 

 東京藝術大学ランチタイムコンサート2016 in 表参道<大学院音楽研究科修士課程1年生によるピアノリサイタル>の第2回目は奥村志緒美さんによる演奏でした。

 華やかなオレンジ色のドレスで登場された奥村さんが前半に演奏されたのは、ベートーヴェン作曲「ピアノソナタ第31番 変イ長調 作品110」です。透明感がありながらも芯のあるタッチで、爽やかな世界を広げられました。瑞々しい音やアルペジオの細かさを生かした推進力のある流れが魅力的でした。第2楽章では一変し、フォルテとピアノの対比で、一気に畳み掛けるような求心力のある音に引き込まれました。途切れることなく第3楽章へと進み、今度は内向的で1フレーズごとに物語性を感じるような演奏でした。考え込むような思慮深い音が次第に展開し、最後に行き着くフーガでは希望と諦めの音がせめぎ合い、葛藤する様子が見事に描かれていました。技巧的な難しさよりも各声部の歌の美しさを引き出し、音の模様が織り込まれていくように感じました。

 前半の演奏後に今回演奏される曲についての奥村さんからのコメントもありました。今回のプログラムをおにぎりとカレーを食べるかのよう、と評しておられましたが非常に熱意あふれる意欲的な選曲です。先ほどの3楽章のフーガでは病気と闘う’絶望’と音楽の中では救いを感じていたいという’希望’の思いが込められていると述べ、奥村さんの楽曲に対する真摯な姿勢を感じました。続くラフマニノフ作曲「ピアノソナタ第2番 変ロ長調 作品36」は奥村さんの高校生のころからの憧れの曲であるそうで、スケールの大きさを感じてほしいと仰っていました。

 緊張感溢れドラマティックに鳴り響く和音で聴衆の心を惹きつけ、次々と展開されていく音に圧倒された第1楽章でした。奥村さんはコメントの中でこの曲を通して作曲家の人生の縮図を感じると仰っていましたが、抗うことのできないような力強い運命を感じる場面、ふと我に返り内向的になる場面、ミステリアスな場面などそれぞれの場面で作曲者の思いを感じずにはいられないような演奏でした。温かく回想的な第2楽章では、飾り立てすぎないシンプルな音色が胸を打ちました。アメリカに亡命せざるを得なかった作曲者の故郷での激動の時代と安らぎへの願いを感じた楽章でした。再び第1楽章のテーマを織り込んだ躍動感のある第3楽章では力強いエネルギーと情熱に圧倒されました。途切れることのない集中力で、曲に負けることなく最後まで邁進されました。

 1時間という短い時間ではありましたが、ベートーヴェンの後期のソナタとラフマニノフのソナタという充実したプログラムと心行くまで楽しんだひと時でした。奥村さんの今後の更なる研鑽とご活躍を願っております。

(M.H.)

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