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《田中克己アンサンブルシリーズ 第5回》
田中克己バースデーコンサート 開催レポート
2016年4月15日(金) 19時開演(18時30分開場)
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

 

 

「この日のために“愛燦々”を編曲された、石川芳先生。さらにサプライズでハッピー・バースデーのオルゴールをプレゼントされていらっしゃいました。」

 

 「田中克己アンサンブルシリーズ」の第5回は、田中さんご自身のバースデーコンサート。誕生日当日の4月15日に開催されました。人生の節目となる記念のコンサートに演奏された曲目は、オール・シューベルト。

 「今日まで生きてきたこと、そしてこれから生きていくこと、いろいろ思い出し、思い描きながら、ご来聴下さる皆さんと、生涯忘れられない素敵な時間を過ごしたいと思います。(当日配布されたプログラム冒頭の「ごあいさつ」より)。」人生をしみじみと思う時、あたたかく大きなシューベルトの音楽はぴったりですね。

 コンサート前半はピアノ・ソロ。最初の曲は、「即興曲 変ト長調 D.899 Op.90-3」です。美しい調べ。穏やかな時が流れ、心が和みます。

 続いて、シューベルトの生涯最後のピアノ・ソナタである「ピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調 D960」。長大な作品です。崇高な第1楽章ではまず、遠くから懐かしい歌が聞こえてきました。青春の息吹、静かな黄昏時。しばしば通り過ぎる不穏な雲行きが、不吉な予兆のようにも感じます。宿命的な第2楽章は、凍てつく大地で、残された力を振り絞ってやっとの思いで歩んでいるかのようでした。暗い静寂を一変させるのが第3楽章。明るく軽やかで、ほっとさせてはくれるのですが、それまでの流れを考えると儚さを感じさせました。そしていよいよクライマックス、第4楽章は、小気味良い流れの中で次から次へとダイナミックに展開。ラストは大団円で、まぶしいくらい華やかな光を放って曲を終えるのでした。

 コンサート後半は室内楽で、有名曲「ピアノ五重奏曲 イ長調 D677『鱒』」。メンバーは、ヴァイオリン:那須亜紀子さん、ヴィオラ:小倉萌子さん、チェロ:谷口賢記さん、コントラバス:吉田聖也さん――若手演奏家との共演です。華麗で優美な第1楽章、アンサンブルに迫力があります。平和に満ちた第2楽章、リズミカルな音楽とのどかな音楽との対比が絶妙な第3楽章、有名な『鱒』の旋律が清々しい第4楽章、素朴で勇ましい第5楽章。ピアノと弦との掛け合いが溌剌としていました。

 大きな拍手に包まれて、アンコールは『鱒』の第4楽章を再びと、『愛燦燦』のピアノ・アレンジ版。最後はサプライズで、バースデーケーキのセレモニーも。終始あたたかな雰囲気のコンサートでした。

(H.A.)

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