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大伏 啓太 ピアノ・リサイタル 開催レポート
2015年10月29日(木) 開場18:30 開演19:00
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

  

 本日は、東京芸術大学および大学院で研鑽を積んだ後、現在は講師として後進の指導にあたっていらっしゃいます、若手ピアニスト大伏啓太さんのリサイタルでした。プログラムには、名人芸ピアニスト達のために書かれた華々しい演奏会用レパートリーよりも、揺るぎない伝統との絆がうかがえる古典趣向の作品が選ばれていました。こうしたレパートリーを聴き手に感動を届けられるように弾きこなすのはとても難しいことであり、大伏さんが今回これらの演目をどう料理されるのかが楽しみな夜となりました。

 初めはドイツの代表的な作曲家ベートーヴェンが書いた、ピアノソナタ通称《告別》。シンプルな響きながらも含蓄に富んだこの作品を、大伏さんは一音一音丁寧に創り込んでいらっしゃいました。特に第1楽章での音楽の呼吸持って行き方や、細かい間の取り方が絶妙で、鋭いセンスを感じる演奏でした。続いて演奏されましたのは、ベートーヴェンに強く影響を受けたと言われているブラームスによる《幻想曲集》。いわゆる楽章ではなく、幾つもの小品が集まっている構成はロマン主義時代ならではのものです。それぞれの音楽のパーツがあたかも即興的に湧いているようでありながら、きちんと計算されているブラームスの音楽世界を、大伏さんは見事に表していました。特に第4番ホ長調と第5番ホ短調は音色やタッチのコントラストが効いており印象的でした。

 後半はここパウゼでもよく演奏されていますショパンの《舟歌》で幕が開きました。ショパンのような旋律の美しい作曲家の作品は、ついその旋律に呑まれた演奏になりがちですが、大伏さんの舟歌は伴奏とみなされている左手の音型もとても存在感があり、手堅い音楽創りが行われていました。続くドビュッシーの《前奏曲集》第2巻からの4曲は、ひそやかなところでも手はピアノの鍵盤を縦横無尽に駆け回るような作品ですが、大伏さんは安定感のある演奏にまとめあげていらっしゃいました。特に高音域と低音域の音色の違いを活かした〈月光の降り注ぐテラス〉は大変印象的でした。

 最後に演奏されましたフランクの〈コラールと変奏〉は、本日のプログラムの中でも大曲になりますが、大伏さんの堅実な音楽創りが大変輝いたものとなりました。変化に富んだ変奏が繰り広げられる中にも、その骨格となっている主題が明快に聴こえる構成力、華やかさの中にも懐かしさを感じる音色に、客席からは大きな拍手が鳴りました。アンコールは有名なシューマンの小品である≪トロイメライ≫。まだまだ大伏さんの演奏を聴いていたいという余韻が客席に残った、大変素晴らしい演奏会でした。

(A. T.)

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