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ピアニスト 田崎悦子 in Joy of 室内楽シリーズ Vol.9 開催レポート
(Chamber music series Vol.9)
〜日本を代表するアーティストとヤング・アーティストのコラボレーション〜
公開リハーサルよりコンサートまで
ゲスト・アーティスト: 水谷川 優子(チェロ)
出演:田崎 悦子(ピアノ)、水谷川 優子(チェロ)、
ヤングアーティスト:長山 恵理子(ヴァイオリン)、高宮城 凌(ヴィオラ)、村上 真柚(ピアノ)
コンサート
2015年10月23日(金)19:00 〜(18:30開場)
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」
ピアニスト田崎悦子さんがゲストの演奏家と若手の演奏家と共に音楽を作り上げる<Joy of Chamber Music Series>の第9回目が10月23日カワイ表参道コンサートサロンパウゼに於いて開催されました。22日に行われた室内楽講座(公開リハーサル)、当日の公開ゲネプロを経てのコンサートでした。ソロ・アンサンブル・各地への訪問演奏と世界中で精力的に演奏活動を展開されているチェリストの水谷川優子さんをゲスト演奏家としてお迎えし、桐朋音楽大学で学ばれているヴァイオリンの長山恵理子さん、ヴィオラの高宮城凌さん、ピアノの村上真柚さんら若手の演奏家と共演されました。この演奏会のシリーズは田崎さんがマールボロ音楽祭で数々の巨匠と共にリハーサルや本番を通して学ばれた経験を、若い世代へ受け継ぎたいという思いで始められました。田崎さんも水谷川さんも若手と演奏することへの期待と意気込みを語っておられました。
プログラムは最近田崎さんが好んで演奏されるという、シューベルト、ベートーヴェン、ブラームスから、それぞれの作曲家が20〜30代の頃に作曲した室内楽曲を選ばれました。前半の最初にシューベルト作曲<ヴァイオリンソナタイ短調D.574>をピアノ村上真柚さん、ヴァイオリン長山恵理子さんが演奏されました。シューベルトの歌心溢れる瑞々しい旋律を心から味わい、聴衆に届けてくださいました。スケルツォの戯れるように生き生きと弾む様子やヴィヴァーチェのきっぱりと決然とした音色など、二人の若々しさとともに様々な音楽へのアプローチの光る演奏でした。
続いてゲストの水谷川優子さんと田崎悦子さんによるベートーヴェン作曲<チェロ・ソナタ第2番ト短調Op.5-2>が披露されました。モーツアルトへの憧れとベートーヴェンらしい利かん坊のような性格を持った曲、と水谷川さんはこの曲の魅力を仰いました。1楽章のピアノとチェロが絡み合い深みを増していき、次第にそれらが浄化されていく様子は息をのむように美しく、2楽章のモーツアルトのように陽気で伸びやかな旋律を心行くまで楽しみました。田崎さんは「とてもハッピーな気分になれる曲」と仰っておりましたが、お二方の喜び溢れる演奏に会場も幸せな雰囲気に包まれました。
休憩を挟んでブラームスの大作である<ピアノ四重奏第1番ト短調Op.25>を演奏されました。始まる前に田崎さんが各演奏家にブラームスはどんな作曲家と思うかを質問され、それぞれのイメージの違いを話し合っておられました。ブラームスらしい考え込むような旋律から始まり、弦合奏による力強いユニゾンから優しさと美しさに満ちた場面まで四重奏のアンサンブルの幅広い表現を感じました。2楽章の各楽器の魅力を存分に引き出した対話や3楽章の豊かな和音など、4人の違いが光る部分も一つとなって進んでいく部分もあり様々な模様を楽しむことができました。そして最終楽章の劇的でアクセントの効いた勢い溢れる演奏は圧巻でした。円熟と若さが入りまじり、破たんを恐れることなく前へと突き進んでいく様子に緊張感と興奮が漲りました。最後のプレストへ向けて激しさと輝きを増していく4人の演奏はまさに熱演というより他ありませんでした。演奏家の皆さんの達成感と幸福感に満ちた表情に会場からはブラボーの声が上がるほどでした。
熟練と気鋭と、それぞれの演奏の合わさった時のパワーを感じた演奏会でした。演奏家同士が話し合い、意見を積み重ねていき互いを尊重し合ったからこそ今回のような演奏が実現したのだと感じました。4方それぞれの更なる演奏活動の発展を願うと共に、より多くの円熟した演奏家と若手の共同作業によって素晴らしい演奏が生み出されることに大いに期待しております。
(M.H.)
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