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デビュー50周年記念
遠藤郁子 ピアノ・リサイタル 開催レポート
「北海道〜パリ〜そしてポーランド」
2015年10月8日(木) 19:00開演
会場:東京オペラシティリサイタルホール

 

 

 日本を代表するピアニストとして国内外で精力的に演奏活動を展開しておられる遠藤郁子さんのデビュー50周年・ポーランド共和国聖十字功労勲章叙勲記念リサイタルが東京オペラシティ リサイタルホールにて開催されました。「北海道〜パリ〜そしてポーランド」と題し、遠藤さんの過ごされた土地と音楽を重ね合わせて演奏されました。

 第一部を始めるに当たり、カメラマン、パートナーとして遠藤さんを長きにわたり支え続け、昨年惜しまれつつ亡くなった田中克己さんへの献奏としてショパン「ノクターン Op.48-1」を演奏されました。慈悲深く、愛情に満ちた音と祈りを捧げつつ演奏されるお姿に心を打たれる思いでした。

 第一部では遠藤さんの故郷である北海道の景色を織り込んだ伊福部昭「ピアノ組曲」を演奏されました。広々とした情景や澄み渡っていく秋風の音、三味線の物憂げな音、力強さを秘めた祭りの音まで、私たち日本人の記憶を呼び起こし懐かしい思いで満たして下さいました。

 続いてラヴェルに学ばれたペルルミュテル氏に師事されたパリの土地からはラヴェル「鏡」を演奏されました。蛾の不器用でユーモラスさえ感じさせるような表現から始まり、3曲目「洋上の小舟」でのしんしんと深まっていく音、5曲目「鐘の谷」での厳かに響く鐘の音と、遠藤さんの音に対するとらえ方の広さや深さ、真摯な思いを感じました。

 休憩をはさんで、ポーランドの土地からはショパン「マズルカ第47・48・1・13番」、「ポロネーズ第5・6(英雄)・7(幻想)」を演奏されました。マズルカは小品ながらもショパンの愛したポーランドの自然や動物、人々の楽しく魅力溢れる情景の詰まった作品です。土地は違えど、豊かな環境の中で生き生きと暮らす人々は私たちと変わりないのだなと感じました。ポロネーズでは祖国の舞踊のリズムを用いてポーランドへの憂い、憧れ、希望、祈りの思いが込められた作品です。死の舞踏を思わせ切れ味の光る第5番、英雄の登場と祖国の復活を渇望する第6番。第7番は帰ることのできなかったポーランドの平安を切に願う心と、ショパンの思いをピアノに託して奏でられました。

 アンコールには遠藤さんを生涯支え励ましてこられたお母様が愛奏していたショパン「ノクターン 遺作」を深い愛情と共に演奏され、リサイタルを終えられました。

 ピアノという楽器や技術といったことを超えて、遠藤さんという一人のピアニストの生きた道すじ、感じてこられた思い、敬虔な祈りを感じたリサイタルでした。50年を過ぎさらに円熟し深まる演奏をより多くの方に届くことを願っております。

(M.H.)

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