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ニュー・アーティスト シリーズ2015 in表参道
伊藤 茉里ランチタイムコンサート 開催レポート
2015年9月19日(土) 12:00開演(11:30開場)
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
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夏の気配も残る9月19日にカワイ表参道コンサートサロンパウゼにおいて、ニューアーティストシリーズ2015in表参道としてピアニストの伊藤茉里さんによるランチタイムコンサートが行われました。風通しの良い古典派のハイドン作曲「ピアノ・ソナタホ短調Hob.XVI34」から演奏を始められました。ハイドンには珍しい不思議な出だしも束の間、あっという間に遊び心あふれるハイドンの世界へ聴衆を引き込みました。古典派というと、和音の種類も少なく、ペダルも制約があるという印象をもたれる方も多いですが、そのようなことを少しも感じさせないような多様な音色・響きを用いて非常に鮮やかな演奏をなさいました。単音のフレーズであっても細かなニュアンスまで考え抜かれ、磨き抜かれた音で、少ない音から様々な音の色が浮かび上がってくるようでした。
続くブラームス作曲「パガニーニの主題による変奏曲op.35」ではハイドンの細やかな演奏とは一変して重厚で勢いのある世界を作り上げられました。テーマはヴァイオリンの曲でおなじみですが、ヴィルトーゾ性だけでなく、緩急を生かし颯爽とした演奏でさらに華麗な作品へと高められました。
ラヴェル作曲「夜のガスパール」をプログラムの後半で演奏されました。「オンディーヌ」では流麗な水の流れを軸に、様々に反射しきらめく様子を表現されました。「絞首台」では淡々と繰り返される拍動のようなリズムの表現が光りました。切り詰められた音の中にも、憂いや不安、悲しみといった気持ちをにじませ、それらが次第に広がり、渦巻いていく様は圧巻でした。「スカルボ」ではその名の妖精のように現れたり消えたり、姿を変えたりとめまぐるしく動き回り惑わす様子が描かれていました。変形するテーマを追っていくうちにまるで聴き手がスカルボに惑わされているような錯覚に陥ってしまうような生き生きとした演奏でした。
そんな伊藤さんの魔術にかけられたひと時でしたが、最後はアンコールとしてショパン作曲「マズルカ59-2」を爽やかに演奏されてコンサートを終えられました。
ダイナミックでありつつも、考え抜かれた音色の豊かさを軸に様々な音の世界を楽しんだ味わい深い演奏会でした。伊藤さんの更なる活躍を願っております。
(M.H.)
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