ニュー・アーティストシリーズ2015 in表参道

ニュー・アーティストシリーズ2015 in表参道
須藤梨菜ランチタイムコンサート開催レポート
2015年9月10日(木) 12：00開演（11：30開場）
会場：カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ」

　本日は多数の国際コンクールで入賞を果たしてきたピアニスト須藤梨菜さんによる、オール・ショパン・プログラムでした。外は台風の影響で生憎の大雨でしたが、会場には気鋭のアーティストの演奏を聴こうというお客様の空気で、よい緊張感と静けさに包まれていました。

　須藤さんの演奏は、躍動感に溢れた音色と、それを生み出しうる抜群の技術にあります。冒頭のプログラム《ボレロ》作品19では、さっそく垢抜けた音が会場の静かな空気を突き抜けてゆきました。次の《夜想曲》作品9-3では、音色にさらに妖艶さや繊細さが加わり、須藤さんの表現力の高さも感じることが出来ました。中盤に演奏された《前奏曲》嬰ハ短調では、波のように漂う伴奏とそこに浮かび上がる旋律とのコントラストで、ショパンらしい旋律美の世界を創り上げられていました。

　3曲目に演奏された《幻想曲》ヘ短調と、最後のプログラムとなりました《英雄ポロネーズ》は、ショパンの作品の中でもかなりの大曲になりますが、須藤さんは持前の技術力でどちらの楽曲も丹念に仕上げていらっしゃいました。《幻想曲》は、色々な種類の旋律の断片が次から次へと絡み合う部分が多々ありますが、須藤さんはそれぞれの音楽のパーツを弾き分け、立体感のある演奏にまとめていらっしゃいました。一方の《英雄ポロネーズ》では、和音一つ一つをしっかりと捉え、華やかで層の厚い音響空間を創り上げていらっしゃいました。

　大きな拍手の中、アンコールで登場したのは、練習曲作品25-5とワルツの第4番。最後の最後までオール・ショパンの、大変素晴らしいコンサートでした。

(A. T. )