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奥田有紀美&木下千鶴ジョイントリサイタル 開催レポート
《 桐朋学園 表参道 サロンコンサートシリーズ Vol.29 》
2015年9月2日(水) 開場18:30 開演 19:00
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
桐朋学園 表参道 サロンコンサートシリーズのVol.29は、奥田有紀美さんと木下千鶴さんのピアノジョイントリサイタルです。奥田さんは桐朋学園大学4年に在学中で、木下さんは桐朋学園大学カレッジディプロマ5年生に在学中。同じ先生の門下生で、後輩と先輩という間柄。リサイタルも緊張感の中、和やかな雰囲気に包まれていました。プログラム前半は木下千鶴さん。冒頭はモーツァルトのソナタ第2番へ長調K.280です。可憐な第1楽章、メランコリックな第2楽章、無邪気な第3楽章を、繊細なタッチで心を込めて演奏しました。
続いてシューベルトの即興曲Op.142-3・変ロ長調。あたたかな慈愛に満ちた演奏。一音一音がとても丁寧で、感動しました!
ラヴェルの「夜のガスパール」より第1曲・水の精(オンディーヌ)は、音の美しさ、響きの美しさが印象的でした。
最後はショパンです。練習曲Op.25-5では、伸びやかな中間部が心に響きました。バラード第1番は憧れに満ちた、初々しい演奏。この原石はこれからさらに光を放つのではないでしょうか。愛情を込めて弾かれる一音一音が新鮮でした。
プログラム後半は奥田有紀美さん。冒頭はベートーヴェンのソナタ第13番「幻想曲風ソナタ」変ホ長調Op.27-1です。情感溢れる第1楽章、弱音の美しさが際立った第2楽章、風のように走り抜けた第3楽章。音楽への熱い思いが伝わってきました。
続いてシューマンの「アベッグ変奏曲Op.1」。愛らしく伸びやかなテーマが魅力的。急速なパッセージでのテクニックが見事でした。
ショパンのノクターン第8番・変ニ長調Op.27-2では、はかなく切ない歌を、しっとりと歌い上げました。その余韻を残したまま、何秒かの静寂を経て、最後の曲、ラヴェルの「夜のガスパール」より第3曲・スカルボ。地獄から湧き出るような連打音が何とも不気味です。きわめて奇怪で超絶技巧が盛り込まれたこの大曲を、怒濤のクライマックスに至るまで見事に弾き切りました。
そしてアンコールに、ショパンの黒鍵のエチュード。軽やかに、さわやかに、リサイタルの終わりに花を添えました。
演奏を終えて、ステージに並び立った二人。照れながらの精一杯の挨拶が、とても素敵でした。
(H.A.)
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